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彼は調子よく僕の肩をぽんぽんと叩くと、その軽快なリズムに合わせて、思い切り突き飛ばしてきた。起こしたはずの上半身が、痛みと共に再び地面に背中をつける。
「じゃあねー、新島くん!」
彼は唾を吐き捨てると、子分みたいに同類の人間たちを引き連れて、僕の前から立ち去っていく。そんな醜い世界の後ろ姿を、小さく呼吸しながら眺めていた。
仰向けになったままの僕は、情けない姿を空に受け入れてもらうかのように、意味もなく両手を広げてみた。じりっと砂を撫でる手の甲が、やけに冷たいような気がした。
「これで、最後だ……」
僕はそっと目を瞑り、ぼそりと呟いた。
身体の痛みは全身を駆け巡っているのに、呼吸はひどく落ち着いていた。
小川が利子付きで残りのお金を受け取ることは、二度とない。
何故なら僕に、明日なんてこないから。
痣が残った胸元と、取れたボタンを隠すように、僕は少し前かがみになった姿で廊下を歩いていた。
放課後の校舎はどこも開放感に満たされているようで、すれ違っていく生徒たちは、学年も性別も関係ないなく楽しそうに映った。
僕はそんな彼ら彼女たちを横目に見ながら、自分の命を消していくように静かに屋上へと足を進めていく。
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