ご主人様は、あなたです。

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 三階まで上がると、屋上へと続く扉がある階段へと向かう為に再び廊下を歩く。音楽室、美術室、技術室と並ぶ長い廊下は、開放感よりもどことなく虚しさが漂っているような気がした。 生徒の姿がほとんど無くなった空間の中を歩いていると、ふと一つだけ扉の空いた部屋が視界の隅っこに映った。 そんな些細なことが気になったのは、たぶんそこが、普段は施錠されているはずの理解準備室だったからだ。 理科室の隣に併設されたそこは、実験で使うための薬品や機材が置かれているため、いつもは鍵が掛けられている。なのに今は、まるで僕を誘い込もうとしているかのように、半分ほど開いていた。 「……」  ただの興味本位だった。  どうせ死ぬなら、自分の憎しみを周りの人間の目に刻みつけてやろうと、飛び降り自殺を考えていたが、頭によぎった『薬品』という単語が僕の足を止まらせた。  無意識に周りを確かめてみると、運が良いことに、誰もいない。まあ、そんなことを気にしたところで、明日の僕には関係ないのだけれど。  屋上に向かっていたつま先を、そっと目の前の扉に向ける。空いた隙間から見える薄暗い室内は、なぜか僕の知っている学校の中とは思えなかった。  何かある、直感的にそんなことを感じた。     
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