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「翔の子供だ。涼一から告白された翌週くらいだったから、五月の初めだったかな。妊娠の判定をしたのは終業式の前だが。そろそろ二ヶ月になるな。嫌がる翔に、私から、泣いて叫んで無理やり迫った。どうしても、初めての相手は翔がよかったんだ」
涼一の両足から力が抜けた。男を骨抜きにするには仕事や夢ではなく、その女を篭絡することだと何かで読んだのを思い出した。
「さあ。私を殺せ、涼一」
その時、すぐ近くから男の声がした。
「いたあああ! お前ら用具室とか言ってたもんなあ! あと二人で最後だ、死ねえ!」
重原だった。血まみれで、拳銃を構えて、校舎の方から駆けてくる。
涼一がとっさに溌七の前に出た。
パン、と銃声が響く。涼一は被弾を覚悟した。
しかし倒れたのは、重原だった。胸から血を吹き、即死していた。
「え?」
涼一が振り返る。
溌七が、震えながら、翔から譲られたのであろうリボルバーを掲げていた。
「ああ、……殺してしまった。私……人を」
「正当防衛だぜ。ありがとう、溌七」
涼一は電光掲示板を見た。99とある。
「こいつ、あと二人で最後だとか言ってたよな。じゃあ、校舎にはもう生き残りはいないってことだ。……溌七」
「え?」
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