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弾丸は進む
「ん?」
それは夜に起きた出来事であった……。
特に目的があるわけでもないのに彼は大都市【東京】の人気のない都市の裏側に来ていた。
「銃声……か?」
そこで耳にしたのは一発の微かな銃声。
日本の都市の裏側とは言え、銃声がすることは多くない。何かあったのかと俺は銃声の方角に足を進めた──。
『やったか?』
「あぁ、こちらは終わったよ」
なにやら物騒なものを持った奴らが裏路地にいた。
見つからないように影に隠れて様子を伺う。
「あれは………まさか、死体!?」
数人に囲まれて倒れている1人の男性。
街灯は点滅しよくは見えないが、頭部からの出血が見えた。
「何をしているの………」
その様子に夢中だった俺は背後にも【何者か】が近づいていることに気がつかなかった。
うなじには金属の何かを当てられているような冷たい感触があった。
何を当てられているか──、それはこの状況からすれば考えるまでもない。
「お………お前らは………なんだ?」
「あなたは質問に答える側。余計な事を喋ると命の保証はできない、あなたの名前は?」
「な………名前は市条悠希」
「特殊能力は?」
特殊能力ということが出た時点で俺は察した。
こいつらは能力を持つ人間を狩る集団、
特殊能力者暗殺集団なのだと。
俺の両親を殺した憎悪の標的──。
「二次標的発生」
「待ってくれ!!俺は能力者じゃない!!」
振り向こうにも振り向けないため定かではないが、恐らくさっきいた仲間に無線かなんかで伝えているのだろう。
このままでは殺されてしまうと感じた俺は必死に訴える。
「お前たちは能力者なら無差別に殺すのか……?」
「無差別じゃない。特殊能力を使って罪を犯した者に裁きを下すのが私たち」
いくつもの足音が迫ってくる。
「仮に俺が能力者だとしても、罪は犯していない……」
「うむ、そうだな。君の顔はリストにない」
リーダーのような人物が後ろから銃口を突きつけられている俺の前に表れた。
「君はなぜこんな所へ?」
「…………」
「目的もなく歩いていた」などという適当な答えをすれば何をされるのかわからない。
しかし、黙っていてもそれはそれで不自然。
だからこそ、俺は───。
「両親が……殺されたんです。能力者によって……誰が殺したのかわからなくて、その犯人の手掛かりを探して」
特殊能力者暗殺集団が両親を殺した犯人。
だがここではそう言うしかなかった。
すると……、
「そうなのか…………、ではどうだい?我々の仲間になるというのは?」
「…………そう……ですね」
心の中では『誰がお前らなんかの仲間になるか』と怒りが湧いていたが、奴等を内部から崩壊させるとこも狙えるチャンスだと思い俺は集団に加わることを決めた。
「君を歓迎するよ。市条くん。市条悠希だからI《アイ》・Y《ワイ》か……言いづらいな。うん、君は条から取ってZ《ゼット》と呼ぼう。私はT《ティー》・D《ディー》だ、よろしく」
「Z?T……D?」
「あくまでも私たちは秘密組織。あなたはまだただの目撃者。私は………N《エヌ》・K《ケー》。よろしく」
うなじに突き付けられていた銃口が下ろされる。
「ここじゃ、本名知らない奴なんて普通さ。私はI 《アイ》・C《シー》。よろしくなぁ~~」
横から声をかけてきたのはミロクMS2000上下二連式散弾銃と思われる銃を手にした女性だった。
「とりあえずこの場を離れよう。厄介ごとになる前にね」
早速奴等の拠点に連れていってもらえるようなので付いていくことにした。
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