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「さぁ、入ってくれ」
そこは荒れた薄暗い路地をひたすら歩いたところに、まるで隠れるかのように存在した扉の向こうだった。
「他にも仲間がいるが、それは後程しょうかいしよう」
ある部屋に連れていかれる。
そこにはいくつもの銃が並んでいた。
「これ……は……」
「さぁ、好きなのを選びたまえ。それが君の強さとなる」
長物からハンドガンまで様々。
いきなり選べと言われても全くわからない。
彼らのやり方はこうだ。
まず、スナイパーでの攻撃、これで多くは仕留めることができる。
しかし、防がれたり治癒されたりする場合はアサルトライフルやハンドガンを用いた近距離攻撃。それでも通用しない場合は圧倒的な破壊力を持ったショットガンでの強行攻撃。
それでも駄目という場合は撤退か──、リーダーの判断となる。
「ん~~、君はそうだな………このハンドガンをサブとしてこっちのアサルトライフルをメインに使うというのは?」
「そう…………します」
渡されたのはドイツ製の自動拳銃であるH&K USP。
軍や警察などに採用されている。
アサルトライフルはアメリカ軍に制式採用されるほど、コンパクトかつ取り回しに優れたM4A1カービンという銃。
都市部等の身動きが取りづらい戦闘でも活躍できるため多く使用されている。
「地下には射撃場があるから行ってくるといいよ。あと、ガンホルダーをつけるといい」
「…………ん!?」
恐る恐る手を伸ばして目の前のM4を手にする。
想像以上の重さに驚きながらもUSPを腰に巻いたホルダーへ装備して部屋を後にした。
「地下……、この階段か」
虫の集る切れそうな照明の照らす階段をゆっくりと降りてゆく。
折り返して見えた階段の下にはN・Kが相棒のスナイパーライフル【M40A3】を手にして座っていた。
「な……にしてるんだ?」
「…………」
声を掛けても反応しない。
気付いていないのかと思い、彼女の肩に手を伸ばしてみる。
「触ったら……撃つよ」
その言葉は冷たく変な圧があり、伸ばした手は彼女の方に触れる直前で凍ったように止まってしまう。
「ご……ごめん」
「射撃場へ行くならそこの扉」
指差した先にはいくつかの穴が空いた扉──。
「あ、ありがとう」
ゆっくりと彼女の横、前を通り扉の前へと向かう。
傷の付いたドアノブに手を掛けて、悲鳴のような音を出すドアを開ける。
「な……んだ」
奥に長く作られた部屋。
囲むように立つ壁はひび割れたコンクリート。そこにいくつもの穴が空いた様々な物が置いてあった。
「ここ……から撃てばいいのか」
少し先にかすれているが線が引いてあった。
両足を合わせて手に握ったM4カービンを構えてみる。
「…………」
ゆっくりと引き金に指を掛けてサイトを使って目の前の物に照準を合わせる。
音が出るかくらいの強さで歯を食い縛り、ゆっくりと引き金にかけた人差し指を折り畳む。
「うぁっ!?」
上半身に大きな衝撃が一瞬のうちに数回加わる。
銃口から溢れる煙様子に目が釘付けになる。
「反動……こんなに強いのか」
反動が凄まじく一瞬のうちに何発もマズルフラッシュとともに発射されるが、銃口は撃つ度に上を向いていったのだ。
「こんなのを扱うのか………」
それから何回も誰もいない射撃場に大きな音を響かせるが反動の強さに負けて、銃口はだんだん上に上がってしまう。
「あっ……」
少し撃った後にいきなりM4が静かになった。
弾が切れてしまったようだ。
「こっちは……」
予備のマガジンまでは渡されてないため次弾がない。
今度は腰に装備したH&K USPを取り出す。
「こんな感じなのか」
M4カービンとは当然の事ながら違って、やや狙いづらさを感じる。
ハンドガンはアサルトライフルのM4より安定しそうなことを思うのだが………。
「……んっ!?」
撃ってみて初めて知る。
その反動の重みを──。
アサルトライフルと言った長物に比べて、上半身全体にというわけではなくどちらかというと腕から肩にかけて衝撃が走る。
両手で握っていても反動は制御できず、狙ったところに当たらない。
そんな俺を嘲笑うかのように、薬莢は目の前に飛び出してやがて地面へ転がって行く……。
「これが……銃」
憎き集団に加わったことなど忘れてゲームやエアガンとはまるで違う、本当の銃の【強さ】を知るのだった。
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