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「旅に出よう」
ガニガニ・9・ボーテが唐突にそう口にしたのは、4月の終わりごろだった。
「どうしたんですか、先輩?」
同居しているルケルケ・7・トーは、いなり寿司を作る手をとめずに訊き返す。
二人してせっせとこしらえていた。できあがったいなり寿司は皿につみあげられており、その数すでに二百個に迫ろうという勢いで、まるでいなり寿司工場である。
ルケルケ・7・トーがアルバイト先のスーパーから大量に賞味期限切れ寸前になって売れなくなった油揚げを安くゆずってもらったから、それで作り始めたわけであるが、いつもながら限度を知らない。
寿司桶いっぱいの酢飯を油揚げに黙々と詰め込んでいたら、さきほどのセリフが飛び出してきたのであった。
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