0人が本棚に入れています
本棚に追加
残り28
僕は暗い部屋に閉じ込められていた。
ドアは電子ロックが掛かっている。
三苫からの依頼なんか断ればよかった。
あの夜、塾に戻らなければこんなことにはならなかった。
『飛』がつく熟語を、午後6時までに50個以上答えないと爆破される。熱いだろうな?痛いだろうな?
午後6時まであと1時間しかない。
だが、頭がフリーズしてしまった。
ちびまる子ちゃん見たいなぁ?
あの事件のあった夜、茶の間でビールを飲んでるとスマホが鳴った。
《あっ、俺だ》
親父からだった。
「何だよ?」
《槙野が誉めてたよ?けど、婆さんだったらパンチくらいにしとけよ?骨がもろいから下手すりゃ死ぬぞ?》
「やり過ぎたとは思ってる、孫から殴られたり災難だな?」
《んでな?あの、ガイシャのスマホの下書きに『ヒントはホテル』って残されていたんだ。別の事件が起きたんでそっちに取りかからなきゃいけない》
「僕だって仕事があるんだよ」
《まぁ、無理にとは言わん、息抜きのクイズだと思えばいい、んじゃ留守を頼む》
母親は近所のおばさまと旅行に出掛けた。
塾長が逮捕されて、運営はどうなるんだろう?
スマホが鳴った。副塾長の美川からだった。『おだまり』の、美川憲一とは似ても似つかない豚みたいなオッサンだ。
《あっ、金無さん?夜遅くにすみません》
「今日は大変でしたね?」
《本当に、あの大人しそうな塾長が、しかもお孫さんを殺すなんて、腑に落ちないのは塾長って嫌煙家なんですよ》
タバコも吸わないのに灰皿なんて普通は使わない。
「で、何です?」
《明日はお休みしてください、警察が他にも調べることがあるみたいです》
「有給使えますよね?」
《ええ、明後日は13時からの講義でしたよね?》
「はい」
《よろしくお願いします》
最初のコメントを投稿しよう!