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名探偵・荒川
福島は国広一郎の殺人事件にまつわる噂で持ちきりである、一郎はベストセラー作家の次男で、クラブで行われるカード賭博が好きだった。クラブから帰宅した後、拳銃の弾で頭を撃ち抜かれて死んでいるのを家族に発見されたのである。遺体の様子から、カード賭博での勝敗計算をしていたところを撃たれたと推測される。しかし、鍵の掛かっていた室内からは拳銃が発見されず、窓は開いていたが侵入の痕跡が見つからない。狙撃であれば相当の達人だが、銃声は誰も聞いていなかった。その後の警察の捜査では動機も犯人の見当も付かないままである。沢村清二はかつての荒川三夫を模倣して事件の真相を推理してみるが、謎は解けない。
殺人の起きた一郎の屋敷まで見物と調査に出かけた沢村は、本を抱えた老人とぶつかり、その本を地面に落としてしまう。本を拾い上げてやり謝罪する沢村を老人は罵り、姿を消した。やがて、何の成果もなく自宅へ引き上げた沢村のもとへ、先ほどの老人が訪ねてくる。面会した老人は沢村を罵った非礼を詫び、近所の本屋であると自己紹介する。そして、沢村の背後にある書棚には数冊分の空きがあるから、と手持ちの本を勧めてきた。書棚を振り返って隙間を確認し、再び老人に視線を戻した沢村が見たのは、笑顔で立っている、死んだはずの荒川だった。沢村は仰天して、気絶をしてしまう。
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