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産み捨てられた それからどうすればいい? わたしには神様の声が聞こえない。  ずっとずっとこのレールはどこまでも続いている、この上を歩いていれば間違いないって信じていた。いつからだろう。そのレールが見えなくなったのは。  小学四年生の夏。放課後なんとなくだべっていた男子に聞かれた。 「お前、すきなひといる?」 「いないよ」 その男子の考えていることは何となくわかった。手のひらで転がすのが楽しかった。 ある日の放課後。その日も教室にふたり残っていた。夕焼けに照らし出されている机は紅く、どこか寂しげで。 「××すきだ。つき合って」 まっすぐと好意をぶつけられた。少しむずがゆくて頬が緩んだ。でも、すきなのかと問われればそれはどうなのだろう。そう思い込もうとすればそんな気がしてくる。でもわたしは、 「ごめん。むり」 拒絶した。いつも通りの貼り付けた笑顔で。  それからだ。掃除の時間、黒板消しを投げつけられ、理科室に閉じこめられ。学校から帰るとすぐにお風呂場へ向かった。チョークの粉を浴びた髪はキシキシと痛み、なぜか涙が流れた。喉から絞り出すように泣いた声はシャワーの音にかき消されて。  中学へ進学した。小学校の同級生は誰もいないとこを選んだ。気がついたら周りにはつも固定の人間が数人いた。張り付けた笑みで自分の心すらも見失ったいた。 休み時間、わたしは周りの雑音に紛れるのが嫌でひとり本を読むようになった。それなのに、 「××ちゃん何してるのー?」 「××ちゃん遊ぼー」 「××ちゃん何読んでるの?」 「ねぇ××ちゃん……」 うるさいうるさいうるさい ××って誰?わたしの、名前?話し掛けてこないでよ。もう、疲れた。 わたしは……だれ? 「心音ちゃん」 そうだ、わたしは心音。他の誰でもない。 「由宇」 由宇がくれた、大切な名前。 「もー心音ったらいつもぼーっとしてるんだから。寝てるのか起きてるのかわからないっ!」 そう言ってころころとわらう姿はとっても眩しかった。 「ね、心音。校庭お散歩しよ。」 そういって由宇はわたしを連れ出してくれた。たくさん、話を聞いてくれた。今まで誰にも話したことのなかったことでも自然と口から零れていた。家に居場所がないこと、信じられる人がいないこと。 「心音、わたしは?わたしも信じられない?」 「信じ……られる」 そのとき気づいた。わたしは由宇に会うために産まれてきたんだって。そして思った。
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