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「わたし、由宇に殺されたい」 「もーなにいってるの。死んじゃだめ」 「死んじゃ……だめ……?」 「うん。だめ。絶対。いい?なにか辛いこととか話したいことがあったらわたしが聞くから。だから死ぬのは絶対にだめ。わかった?」 「うん」 そう言うしかなかった。だって由宇の言うことは絶対。由宇に嫌われたら生きていけない。  それなのに、いまわたしの足下には都会の雑踏が広がっている。ビルの屋上から空に、片足だけ差し出す。下を行き交う誰かたちは見向きもしない。みんな自分が生きるのに必死なんだ。上なんて見上げない。ただ自分の足元だけ見て、自分の歩いてきたレールは曲がっていないと必死に信じて歩っている。 「由宇。わたしのことすき?」 「うん。すきだよ」 「由宇。わたし生きててもいい?」 「うん。いいよ」 「由宇。だいすきだよ」 「わたしも。だいすき」 「由宇。今日○○ちゃんと一緒にいたの?なんで、わたしのこと嫌いになったの?わたし以外見ないでよ。わたし以外と喋らないでよ」 「ごめんね。心音のこと嫌いじゃないよ。心配にさせちゃってごめんね。」 「由宇。わたしいらない子だよね?死んでもいいかな?」 「死んじゃだめ。前にもいったでしょ?辛いことあったら何でも言ってね」  由宇。わたしもう、なんにもわからないよ。由宇と話せて幸せなはずなのに。なんでだろ。心の中がぐちゃぐちゃして、勝手に涙が出てきて、だめなのに死にたいって、思っちゃうんだよ。  ごめんね、由宇。  コンクリートの敷き詰められた歩道を見下ろす。それから、少し息を吸って、街の雑音に背を向けた。胸の鼓動がすぐそばで聴こえる。力一杯足元を蹴る。 「さようなら由宇。だいすきだよ」
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