第一章:それぞれの奮闘

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第一章:それぞれの奮闘

 教官が合図をした瞬間、演習場の地面から染み出るように粘着質な液体が音を立ててしみだしていく。その液体は徐々に盛り上がっていき水色の不定形の悪魔へとその姿を変えていった。  形水(スライム)。害獣の悪魔が少女たちの前に顕現する。ほとんどの受験者たちはその姿を確認すると自分の指を動かし小鬼(ゴブリン)を操作して形水(スライム)目掛けて突撃させる。しかしその動きをしない者たちもいた 「た、大量出てきたぁ!」 「落ち着いて、シェナさん!!」 「二人ともさっき言ったとおりに後ろの敵は残り二人に任せて自分は前の敵だけに集中すること、いいね?!」 「「もちろん!!」」  中心地帯にいるリーン、シェナ、フランはほとんど背中合わせになるよう固まって自分の小鬼(ゴブリン)目掛けて体当たりを仕掛けてくる形水(スライム)達を迎え撃っていた。  シェナは最初次々と出てくる形水(スライム)驚愕していたがすぐに立ち直り縦、斜め、横と素早い動きで短剣を振らせ不定形な悪魔たちを切り払っていく。フランはナイフを振らせるスピードはシェナよりも遅いが突進してきた形水(スライム)に対して受け流すような防御を丁寧に行い小鬼(ゴブリン)へのダメージをごくわずかに抑えていた。二人の動きは年齢を考えれば高レベルの動きであったが三人組の最後の一人、リーンの動きは格が違った。  封魔傀儡(デモンドール)は操る際、魔糸と呼ばれる霊的経路を通して指で動かす。あくまで人間がその状況に応じて指で操るためワンテンポ動作が遅れてしまう。実際シェナとフランはその遅れを小鬼(ゴブリン)の行動速度で補っていたがリーンはほぼタイムラグゼロで的確に形水(スライム)を捌き、弾き飛ばしていた。動きが激しくないため二人と比べると地味な印象があるが実際にやっていることは相当にレベルが高い。中央で試験監督を行っていたアキは薄い魔石版(モノリス)を片手に内心感心する。 「(………あの三人はたぶん合格ね。特にあの金髪の子、リーンは戦い方が相当にうまい。才能やセンスで操ってるわけじゃない、確かな努力が感じる丁寧な動きだわ。おそらく相当にいい指導者に教えてもらったのね。……だからこそ残念ね。適合さえしてれば生徒会執行部(ソロモンナイツ)に誘いたかったのに)」  アキは小さくため息をつくと魔石版(モノリス)を操作して特記事項を記す。 受験者番号56番:シェナ 81番:リーン 117番フラン 封魔傀儡(デモンドール)の高い操作適性を確認、と
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