第一章:それぞれの奮闘

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 演習場の北側。その隅のほうにテリアシーヌ、ダリアは突っ立っていた。これだけを言えば形水(スライム)に恐れをなしここまで逃げてきたように見えるが実際は違うテリアシーヌは目を動かし演習場を一瞥すると澄んだ声で自分を中心に扇状に展開している上流階級の少女たちに指示を下す。 「右翼隊、二時の方向から来ています。落ち着いて防御を!左翼隊深追いはしなくて結構!ここまで封魔傀儡(デモンドール)が密集していれば形水(スライム)達も完全に体が修復し終える前に突撃して来ます!」 『はい!!テリアシーヌお姉様!!』  20数人以上いる上流階級の少女たちは声をそろえて号令すると指示通りの行動を己の小鬼(ゴブリン)に命じさせ、次々と襲い掛かってくる形水(スライム)に一撃を畳みこんでいく。その一発で倒せたならそれでよし、生き残られたら修復途中に蹴り飛ばし距離のアドバンテージを稼ぐといった風に割り切った作戦のおかげで周囲の形水(スライム)は着々とその数を減らしていった。  高度な思考能力を持たない形水(スライム)達もこのままではまずいと思ったのか防衛をしている前列の少女たちが操っている小鬼(ゴブリン)の前で体を小さく中心に縮め大きく跳ね上がった、中央で指示を行っているテリアシーヌの小鬼(ゴブリン)に目掛けて。テリアシーヌはこちらに突っ込んでくる3体の形水(スライム)に気付くが小鬼(ゴブリン)を動かすための指は一切動かさなかった。その必要がないからだ。 「お姉様に失礼ですわよ、この愚物」  硬化した表面がテリアシーヌの小鬼(ゴブリン)に着弾しかけたその時素早く連続した風切り音が響き3体の形水(スライム)は四散し核と薄皮が演習場の地面に零れ落ち蠢いていた。テリアシーヌは薄く笑いながらこれを行った自分の一番の妹分、ダリアに目を向ける。 「ご苦労様、ダリアさん」 「いえ、心配いりませんわお姉様。私はお姉様を守る剣、この程度当然のことですわ。それより早くとどめを刺しましょう」 「ふふ、そうですね」  テリアシーヌ笑いながら指を軽く動かし小鬼(ゴブリン)を動かすとその足で形水(スライム)のむき出しの核を二つ踏みつぶした。最後に残った核はわずかに再生した体を使い何とか逃げようとしていたがダリアの小鬼(ゴブリン)が投げつけた短剣が刺さったことにより魔素の煙を噴き出し消滅した。その様子を確認し終えると中央方面、特に形水(スライム)を倒しながら他の受験者を妨害しているエクゥス達を睨みながら、自分たちの妹分たちに命令を告げる 「さて、皆さん。そろそろ形水(スライム)の数も減ってきましたし中央の方に行きましょうか。……何やら下品な連中が騒ぎ始めているみたいですし未来の同級生を間引くにはちょうどいい時でしょう」
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