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「あーあ、これはバレちゃったわねぇ。メリシスちゃん演技が下手なんだから」
「ちっ、へましやがって。俺がせっかく手引きしてやったのに………どうすんだ、敵が馬鹿じゃなきゃここに確認しに来るぞ」
ここは形水の飼育と各演習場へ転送する魔方陣が併設されている巨大倉庫。普段からここは危険区域として複数の警備兵たちが防衛しているのであるがその姿は確認できずその代わり宇宙を思わせる色彩の長襟のコートを着た三人の少女が喋っていた。
気楽にしゃべっている口元にマスクをつけた長い桃色髪の少女はからかうように右目に黒い革製の眼帯を付けた黒髪のボブカットの少女は舌打ち交じりの強い口調で灰色髪を編み込んだお団子ヘアの少女、メリシスを非難する。しかしメリシスは通信機を起動させながら冷静に言い返す。
「構いませんよ、どちらにせよ我々の役目はこれで終わりました。あれの転送が終わり次第さっさとこの悪しき国から脱出しますよ。………ドロワ、シキル、ルーネ、ジェシカ。あなたたちの方は準備ができましたか?」
【ふふ、愚問ネ。美しく完璧な私には造作もなかっタワ】
【ひひひ………わ、私の、ほ、方もじゅ、準備びびが、で、できまし、た………………だからいつでも行けるぜヒャハァァァァァァァァ!!】
【ルーネも準備できてるよ!!でも残念だなぁ、本当はここの連中をルーネが皆殺しにしたかったのになぁ!!】
【オラも準備はできたけど、ほ、本当にやるんだか?やっぱり気が進まないだ………】
「迷いは捨てなさいジェシカ。これは我らの国の繁栄のため必要なこと。……では今から一分後作戦を開始する。全員それまでにソロモン女学院から撤退せよ。……切ります」
「しかし、最初っから思うが回りくどいことしやがる。あの糞女も含めてあんな餓鬼共、俺一人で皆殺しにしてやれるのによ」
通信を切ったメリシスを見ながら眼帯の少女は舌打ちをしながら文句を言う。彼女の言葉を聞くとメリシスはわざとらしく大きなため息を吐きながら半目で眼帯の少女に説明する
「…………あなたといい、ルーネといい、最初に説明したはずですがね?我々敵対勢力が皆殺しにするのでは意味がないのです。この国一の傀儡魔導士養成校ソロモン女学院の不祥事で入学候補生が全員死んだ、という状況を作ることに意味があるのです……さぁ、おしゃべりはここまでです。そろそろ我々も撤収しましょう。行きますよハル、エンリエッタ」
「ちっ、命令すんなカスが」
「はいはい」
メリシスが呼びかけるとハルとエンリエッタはそれぞれ応答しながら倉庫の外へと歩いて行った。二人が出たことを確認するとメリシス歩き出し出口まで来ると後ろを振り返りかえった。
彼女の視線の奥には転送まで30秒を切った魔方陣の上にいる巨大で禍々しい不定形の怪物が蠢めいていた。メリシスは邪悪な笑みを浮かべながらその怪物に一方的に話しかける。
「さぁ、後の蹂躙は頼みましたよ、大喰形水」
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