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第一章:リーン対テリアシーヌ
「あー!!もー!!後何匹いるよ?!もう二時間ぐらいたってんじゃないの?!」
「まだ20分も経ってませんよ……でも確かに疲れてきましたね……!」
「シェナちゃん、フランちゃんもとにかく集中力は切らさないで、形水の数は絶対に減ってきてるから多分もうすぐ終わりだよ!!」
演習場の中央付近を陣取りそれぞれ背中合わせで形水を迎撃、討伐を行っているリーン、シェナ、フランは肩で息をしながら激しい操作を続けていた。少し前に北側と南側の形水達が追い立てられたよう中央に逃げてきたことで相対的に彼女たちが相手にする形水の数と攻撃の密度が増量してきたのである。
「あたしたちもう2,3体は倒してるんだしもう後は逃げに徹しても大丈夫じゃない?!」
「でもそんなことしたら減点対象になるかも………ってシェナちゃん!!来てるよ!!」
「っ!!分かってるよ!!」
一瞬のよそ見のうちに跳びかかってきた三体の形水に驚きつつもシェナは素早く小鬼を動かし短剣で二体の形水を切り裂き弾き飛ばす。しかし後ろから遅れて飛んできた形水がシェナのゴブリンの体に直撃し短剣を持っている右前腕にまとわりついた。
「しまった!!」
「シェナちゃん?!」
「シェナさん?!」
シェナは焦りを露わにしながら小鬼の右腕を振り回し形水を振り払おうとする。しかし形水はむしろ引きはがされないようにどんどんと小鬼の胴体部分目掛けて上っていく。他の形水達もこれ幸いにとシェナの小鬼目掛けて突撃してくるが陣形を解き、リーンとフランはシェナと小鬼を挟むような位置に立ち形水達をその斬撃で切り払い怯ませていく。
突撃を続ける形水達の猛攻を防ぐリーンに対しシェナは焦燥と諦観がにじんだ声で懇願する。
「ダメだ、外せない……!!リーン!!あんたの小鬼であたしの小鬼の右腕を切り離して!!早く!!胴体に到達する前に!!」
「だ、ダメだよ!!左右非対称の封魔傀儡を動かすのは難しいなんてレベルじゃない!!しかも補修するパーツもないんだよ?!」
「それでも機能停止して失格するよりまだましだ!!さぁ、早く!!」
確かにリーンにも理屈は分かる。魔法が使えるなら話が別だが物理攻撃能力しか持たない小鬼だけのこの状況では形水に取りつかれたパーツを切り離すしか方法がない。しかしそんなことをすればまだ形水が30匹以上いるこの状況ではシェナの失格はほぼ濃厚になる。その考えがリーンの頭にこびり付き判断を決定させることができない。とその時、
「迷ってるなら僕がやってあげよっか?」
シェナの後ろから二人のやり取りをあざ笑うような声が聞こえてきた。二人は急に聞こえてきたその声に反応して後ろを振り向いたその先にあった光景とは、
フードの少女、エクゥスと彼女の小鬼がシェナの小鬼の右腕を短剣を使い形水ごと切り刻んだ、衝撃的なものだった。
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