第一章:リーン対テリアシーヌ

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 しかし、その凶刃はリーン達にまで届かなかった。  突如飛んできた短剣が先頭にいたトルチェの 小鬼(ゴブリン)の左肩部分に突き刺さったからだ。思わずその光景に愚連隊(ヤングギャング)達も怯み小鬼(ゴブリン)達を手元に戻す。   リーンたちは短剣が飛んできた方向を確認する。そこには試験前抗議をしていた白髪のおさげの少女テリアシーヌと薄い紫髪の縦ロール少女ダリアを先頭にした上流階級の少女の一団がいた。テリアシーヌの姿を見てフランは思わず目を見張り口元に手を当てる。 「あの……五つの星の紋章……まさか、王下五貴族?!」 「「?!!」」  フランの言葉に思わず二人は絶句する。  王下五貴族とはここマリオネツト王国の王都、東都、西都、南都、北都に一家ずつ存在する最上位貴族のことである。特にここ王都を領地としているノルステム家はその中でも王家と強いパイプを持ち他の王下五貴族をまとめる立場となっているのである。驚く三人に上品に笑いながらテリアシーヌはゆっくりと近づき、一瞬で表情を変え鋭い目線を愚連隊(ヤングギャング)達に向ける。  突如現れた貴族(目の敵)に威嚇態勢をとる仲間たちにエクゥスはジェスチャーを使って諫めさせ前に出てきたテリアシーヌに呼応するように前に出る。 「まぁ私は、母上や姉上と違い地味なので知名度も低いですがね………。さて、この女王陛下が作られたこの神聖な学校でずいぶんと野蛮なことをしてくれましたね愚連隊(ヤングギャング)。」 「野蛮、ねぇ。だけど国が、女王サマが欲しがってんのはどんな手段を使っても国を守れる強い遣い手(コマンダ)だ。そんなこともわかんないわけ?」 「黙りなさい。マリオネツトの遣い手(コマンダ)の伝統にあなた達のような下劣な者たちなど必要ありません。当然、 そんな下劣な者に不意を突かれる弱者も必要ありません」  とその瞬間、テリアシーヌは素早く中指を動かし自分の小鬼(ゴブリン)を操作し、短剣を振りかぶらせて突撃させる、シェナの隻腕の小鬼(ゴブリン)に目掛けて。そのあまりの暴挙に三人もちろん愚連隊(ヤングギャング)の面々も目を見開くがシェナはギリギリ反応し左腕の短剣で迎撃しようとする。しかし突然シェナの小鬼(ゴブリン)が右側に大きく傾いたのだ。何かと思いすぐさまシェナは確認するとおそらくテリアシーヌの取り巻きが投げたと思われる短剣が小鬼(ゴブリン)右大腿内側部に突き刺さっていたのだ。 「き、汚いぞ!!」 「汚い?違いますよ、これは連携ですよ……!!」  その間にテリアシーヌの小鬼(ゴブリン)は短剣の射程まで後3歩というところまで到達していた。シェナも何とか立て直そうとするも右側を大きく損傷してしまい中々バランスを保持することができない。さらにそれに対し追い打ちをかけるようにテリアシーヌは大きくシェナの小鬼(ゴブリン)の右方向に大きく飛ぶ。 「方向転換の軸になる足が潰れていては反応できない。さようなら、これで終わりですよ」  そしてそのまま動くことができないシェナの小鬼(ゴブリン)の首を斬り飛ばそうとした次の瞬間、テリアシーヌの小鬼(ゴブリン)の斬撃が突如現れた別の小鬼(ゴブリン)によって弾かれ、さらに腹部に強い蹴りでバランスを崩しながら遠くに飛ばされてしまった。 「な……?!」 「うそでしょ……お姉様の攻撃に反応した?!」 「一体誰が……?!」  衝撃を受けたテリアシーヌは素早く自分の小鬼(ゴブリン)を起き上がらせ自分の手元に戻し自分を蹴り飛ばした小鬼(ゴブリン)の操者を確認する。その小鬼(ゴブリン)はシェナの小鬼(ゴブリン)をかばうように前に立ち短剣を構える。そしてその操者、リーンもその後ろに立ち両手を前に突き出し足が震えながらも臨戦態勢をとる。 「………たとえ貴族であろうと……こ、これ以上、私の大切な友達に危害を加えようなら、 私は、絶対に許しません!!」
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