プロローグ:この世界の日常

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 現在午前0時城下町繁華街。日中は常に住人たちの熱気で溢れている活気のある町であるが、すっかり日が暮れたこともありゴーストタウンのような静けさと不気味さが繁華街を支配していた。そんな場所にはおおよそ場所違いの少女たち五人が陣形を組み「何か」に相対していた。  その「何か」は一見姿だけを見たら白い犬を思わせるが、その大きさは少女たちの3倍以上は余裕にあり背中に生える巨大な黒い翼と鋭い刃物のような牙と爪が異形の存在であることを表していた。  しかし少女たちは人知を超越したような怪物を見ても怯える様子は全くなく、彼女たちの中心に立っていた黒髪の長髪を一本にまとめた少女が一歩前に出て両腕を前に突き出し怪物を見据え後ろの少女たちに対して号令をかける。 「こちら生徒会執行部(ソロモンナイツ)翼狗の大総裁(グラシャラボラス)を発見した。これより討伐を開始する、来い善狩の公爵(バルバトス)!」 「やるぞ、双角の伯爵(ボディス)!」 「行っちゃって、火種の総裁(アミー)!」 「時間やで、鉱泉の公爵(クロケル)!」 「お、お願い、鏖殺の侯爵(アンドラス)!」  黒髪の少女の号令に呼応するように後ろの少女たちも両手を前に突き出し号令をかける。すると彼女たちの前に底の見えない漆黒の穴が開き、そこから人形が這い上がり翼狗の大総裁(グラシャラボラス)から彼女たちを守るように立ちふさがった。  その姿は雨合羽を被った狩人、二つの角を生やした剣士、蝋燭人間、長髪の天使、腕がその身長ほどある鳥人と姿形はバラバラであるがその意志を感じさせない人工物の目は翼狗の大総裁(グラシャラボラス)の方をじっと見つめていた。  その人形たちを心底蔑んだ目で見ていた翼狗の大総裁(グラシャラボラス)は怒りと不快感を露わにした唸り声をあげて戦闘態勢をとった。少女たちも腕を動かし指示を与えると人形たちもそれぞれ武器を構え迎え撃つ準備を整える。そして次の瞬間  翼狗の大総裁(グラシャラボラス)は咆哮を上げながら、5体の人形は少女たちが腕を振るうのと同時に目の前の怪物に対して突撃し、激突した。  ここは魔術大国の一つ、操魔国家マリオネツト。  悪魔の魂を宿らせた傀儡を使うことで様々な分野で発展してきた国である。この物語はこの王国の名門学園「王立ソロモン操魔学院」の生徒会と一人の新入生、悪魔狩りの悪魔遣いが織りなす物語である。
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