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次の瞬間、リーンの小鬼の右手を起点に暴風が発生しテリアシーヌの小鬼を吹き飛ばし、空中できりもみ回転した後、水切りの石のようにバウンドをし仰向けに倒れてしまった。流石に予想できなかったのかテリアシーヌ達ははしたなくも感情のまま叫んでしまう。
「ば、馬鹿なっ?!小鬼が、魔法ですって?!!」
「そ、そんな馬鹿なことが、ありえませんわ!!」
「い、一体………一体どんなトリックで、〈ウィンドショット〉を使ったんですか?!小鬼の内包魔力では下級魔法とはいえ使えないはず!!」
この世界の魔法は特殊な発音によって自分か、自分が操作している封魔傀儡の内包している魔力を活性化させて使う超常の異能を使うのである。しかし彼女達が知る限り下級の悪魔、特に小鬼にはそれに特化した個体、小鬼術師でもない限り魔法を使えるはずがないのであるが………。
「………昔、お母さんが教えてくれたの。物理戦特化型の封魔傀儡以外は、波紋同調をすることができれば最低でも一日一回、攻撃魔法を発動させることができるって」
「………!!ですが、ですがまだです!!あなたにできるなら王下五貴族である私にできない道理はない!!今度は私が………!」
テリアシーヌは自分の小鬼のいる方向に両手を突き出し操作する、起き上がらせ自分の手元に戻しリーンに一泡吹かせるために。
しかしその時異変が起きた。機能停止しているわけではない、だが大きく動かし立ち上がらせることができないのだ。それに困惑したテリアシーヌは自分取り巻きの小鬼に自分のを護衛させつつその場所に向かうそして気が付いた、今の自分の小鬼の惨状を。
「な、なんなんですか………!これは?!………!ま、まさか………まさか、短剣の破片?!」
確認すると思わず口元に手を当て後ろに下がってしまう。自分の小鬼は体の前面にびっしりと鉄の破片が突き刺さり、特に関節部分には深々と突き刺さり稼働を阻害していた。事実テリアシーヌの命令通りに動こうとするものの破片が挟まり正常に稼働できず痙攣しているような動きしかできなかった。リーンは無理矢理動かそうと悪戦苦闘する彼女の後ろ方面に立つ。テリアシーヌはそれに気づき後ろに後ずさる。
「砕けかけの右の短剣を起点に魔法を使ったのは………こうするために………!!」
「そう。どれだけブーストしても小鬼の魔力じゃ決定打を撃てる魔法は使えない。だから最後の一押しを使ったんだよ。狙い自体は賭けだったけど………あなたは何の次策もなく決めようとしていたのが分かったから行動が読みやすかった」
リーンは右手の親指と人差し指をピンと伸ばし他の指を握ることで拳銃のようなポーズを作り小鬼にも同様の指のポーズをさせ、うろたえるテリアシーヌともはや満足に動くことができない小鬼を同時に撃ち抜くように指さす
「………あなたの敗因は、自分を特別だと思い込み何でもできると妄信したことだよ」
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