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第一章:リーンの覚悟
一瞬、リーンにはアキが何を言っているのか分からなくなり頭が真っ白になった。自分たちと共に戦ってほしいという言葉もそうであるが何より彼女が言った悪魔の名前はこの国の人間なら知っていいほどの有名なものであったからだ。
「グ、翼狗の大総裁ってあの翼狗の大総裁?!72体の魔柱の悪魔の序列25番の大総裁で『赤き竜の六柱』の統屍の少将の直轄の部下の翼狗の大総裁?!!」
「そ、そうよ………いきなり早口になったわね。でも、話は早いわ、あなたにこれを……」
「ちょぉぉぉぉ!!待てやぁぁぁぁぁ!!」
こんな状況にもかかわらず目を輝かせてアキが見せた翼狗の大総裁の封魔傀儡の詳細を早口で説明し始めたリーンに彼女は若干引くもちょうどいいと考えそれを渡そうとするも奇声を上げて腕を振り落としたレイスによって阻まれてしまった。
「レイス、あなた何をしているの?時間がないのよ?」
「いやいや、ちょっと待って?!そもそもその子適合者なん?!通信では適合者いないって言っとたやん!!」
「………反応が微弱だったから気のせいだと思って言わなかっただけだけど?」
「いや言おうや!!あんた自分の中で考えを完結させる癖ホントやめて?!」
おそらく頭の上に疑問符を出しているアキに突っ込みを加えるレイスは息を整えると今度は真面目なトーンでアキ、翼狗の大総裁、そしてリーンを交互に見ながらアキに話しかける。
「………もうええわ、説教は後でナーシャさんにやってもらうとして………ウチは何をしたらいい?」
「私はこの子に翼狗の大総裁の起動、操作方法を教えるわ。あなたは他のメンバーと連携して捕食形水の足止めをお願い。」
「よっしゃ、聞いたか?!ナーシャさん、ミリア、マルシェ!!」
彼女は耳に手を当て大声で話し始める。するとさっき彼女が言った言葉がアキの耳にも届く。どうやら通信具を発動していたらしく他の生徒会メンバーからも連絡が入る。
【了解。こちらは避難が完了したからすぐに行く。………アキ………お前はこの件が終わったら二時間正座だからな………!】
【こっちも受験生の子達逃がしたから今から参加しますよー】
【りょ、了解です!!こちらもすぐに行きます!!】
「………ちゅう訳や、うちも行ってくる。ただし時間はかけんといてや、時間はかければかけるほどウチらが勝つ確率と食われた子らが助けられる確率が減っていくんやからな」
「もちろん分かってるわ………後ナーシャに説教は一時間にしてもらえるようにして交渉しておいて」
「はいはい了解!!来いや岩窟巨人!!」
レイスが呼び出すと彼女の前に出現した闇の穴から正立方体の石が組み合わさって人の形をとっている巨大な封魔傀儡、岩窟巨人が顕現しレイスは岩窟巨人を操作し差し出させた手のひらに乗りさらにそこから肩に飛び移り捕食形水の方へと突撃する。それを見てリーンは思わず呆然としてしまうがアキに肩を叩かれたことにより自身がやるべきことを思い出し彼女の方を見る。
「ではレイスのせいであなたがもう承諾のようになってしまったけど改めてあなたに願わせてもらうわ。どうか私たちに協力してくれないかしら?」
アキは真っすぐな瞳でリーンを見つめながら再び翼狗の大総裁を彼女の前に差し出す。リーンは今度こそそれを掴み決意を秘めた目でアキを見返す。
「………はい、私でよければよろしくお願いします!!」
「よし、なら翼狗の大総裁を起動させるわよいいわね?」
「はいっっ!!」
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