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「………そんなのずるいですよ………!!そんな選択肢、正解なんてないじゃないですか………!」
リーンは胸元の服を力強く握りしめ自分の足もとにある贄の儀剣を俯くように見る。その瞳からは恐怖か苦悩からか大粒の涙が零れ落ち地面に染みを作っていた。アキは彼女にゆっくりと近づきつつ彼女の言葉に答える。
「……そうね、こんな選択に正解も不正解もない。でも、私たちの諸々の不出来さを棚に上げさせてはっきりと言わせてもらうわ、
あなたはどの選択をとったとしても必ず痛みを伴う。だからこそ、すべての人間の運命を決める岐路に立ったあなたはちゃんと選んでほしい。自分が受ける痛みを、自分が納得できる結末を。………あなたが自分で決めたことならば私はそれを尊重します」
「………………!!」
アキの澄んだ見通すような眼を見たリーンは顔を今気も大泣きしそうな顔になり少し後ろに下がり再び顔を俯かせ震えだした。その様子を見たアキはどこか安心したような今までとは違う柔らかい笑みの表情を見せる
「………それで十分よ、ありがとう。あなたの勇気ある選択に敬意を表するわ」
するとアキはリーンの足もとに刺さった贄の儀剣を拾おうと体を屈ませる。アキはリーンの態度から「贄の儀剣を使わない」道での問題の解決を選んだのだと考えたのだ。もちろんそれを誹るつもりも使わせる道に促すつもりもない、ある程度できた当たり前の結末だったからだ。
だからこそアキは一歩遅れた、刺さっていた贄の儀剣まで後指一本分という位置で顔を涙を乱暴に腕で払ったリーンに猛スピードで横取りされたのだった。流石に普段から冷静沈着な彼女でも彼女の代わり様には驚くがすぐに元の冷静な彼女に戻る。なぜなら彼女は見たからだ。
友を守ると決めた時のように決意を秘めた目をしたリーンの姿を。
「………それを取るということがどういうことなのか、分かってるのよね?………なんて的外れのことはもう聞かないけど、これだけは最後に聞かせて。
あなたはなんでこの「道」を選んだの、何を思って納得したの?」
アキの静かな問いにリーンはどこか醜いことでも語るかのように自嘲気味に話し始める。しかし彼女の言葉はだんだんと熱を帯びていきヒートアップを始め、決意を吠える。
「………そんなに大層なことじゃありません。正直今だって私は怖い、痛いことは苦手だし奥歯を噛み締めておかないと今にも震えてしまいそうなんです。でもそんな私にだってわかります、
この痛みから逃げて助けられた可能性があったかもしれないのに30人以上の子達を見捨てれば、私は二度と大切な友達や家族に顔向けできなくなる。その恐怖と痛みは、きっと次元が違う………!きっと耐えられない………!
だから……はっきり言います、私は自分の選択に納得なんかしてません!でも、30人を犠牲にしてでも被害を最小限に抑えるなんて心が強い人の考え私には到底できません!!だから私は、
弱い私の心を保つために誰一人死なず捕食形水を倒してみんな助かる道を選びます!!そのためなら体の痛みにだって耐えて見せますっ!!」
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