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「ではこれより試験概要を改めて説明する。試験開始と同時にこの演習場に100体の形水を放つ。諸君らにはそれを全て討伐、もしくは脱落者が8割を越すまで戦ってもらう。脱落の条件は自分の封魔傀儡が機能停止状態になること、私たちにリタイヤを申告した時のみとする。そしてその結果に応じて最終的な合否判定をする。以上だ」
「形水……ですって……?!」
「おいおい正気かよ……?!」
ざわざわと少女たちに再び波紋が生じる。しかしそれも無理からぬことである。
形水とは魔素を形として結合させることができなかった不定形の悪魔である。この説明だけを聞くと欠陥を持つ弱小悪魔と思われてしまうが実際は様々な意味で厄介な悪魔である。体の中にある悪魔の心臓を潰さない限り自然の魔素から体を何度でも再生するしぶとさに、体を一時的に硬化させて放つ体当たりは打ちどころが悪ければ大人の背骨をへし折る破壊力がある。おまけにその倒し方の都合上封魔傀儡中に封印して使役させることもできないので、そもそもの絶対数減らないというまさしく害獣と呼ぶべき悪魔なのである。
「一応言っておくがこの試験で使う形水は学院が調教を行った個体を使用している。試験用に使う封魔傀儡以外は攻撃しない」
「試験用の封魔傀儡……?あの、それは私たちが使う物のことでしょうか」
列の先頭のリーンがゆっくりと挙手して質問をすると、教官は懐から一本の角が生えた緑色の人形を取り出し質問に答えてくれた。
「そうだ、今回諸君らには学院の試験用の封魔傀儡、小鬼を使用してもらう。武器は全て鉄短剣で固定とする」
「うわ、小鬼って……まじで?リーチ全然ないじゃん……」
「おまけに武器は鉄短剣……わかっていたけどこれは相当厳しいわね」
列に並んでいたシェナは思わず呻くような声を出し、フランは額に汗を流す。小鬼とは悪魔の中で最下級と称される魔物である。手足が短く魔素に襲う量も少ない、それこそ群れでなく一対一ならば封魔傀儡を使わずとも撃退できるとさえ言われているのだった。
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