第一章:急転の実技試験

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 一方鉄短剣(アイアンダガー)は小ぶりで扱いやすいので悪くない武器であるが形水(スライム)は弱点の心臓を壊さない限り何度でも再生するという厄介な性質を持っている。それを考えると鉄短剣(アイアンダガー)の刃渡りの長さではそれを完全に破壊するには時間がかかってしまうのである。当然時間がかかれば反撃を食らう可能性や他の個体に背後から攻撃される可能性を生んでしまう。  要するに相性は最悪なのである。想像以上の難易度設定に少女たちの空気は沈んでいるがそんなことはお構いなしに教官は発言する。 「では最後に、本試験に対する質問、および抗議はあるか?あれば聞くだけ聞こう…………無いようならば係の者に自分の番号が書かれたアタッシュケースを受け取り、演習場内の好きな場所にて待機し、護身装備を装着した後小鬼(ゴブリン)の動作確認を行うこと。全員の動作確認が終わったことが確認できたら、その5分後に試験を開始する。それでは、解散!!」 * 「うわ、今期の入学試験めっちゃ難いやん。あの教官相っ変わらず理想高いわ高すぎるわ」 「ホントだよねぇ、たぶん大半は初等学校で簡単な動かし方を学んだだけだろうし、これ半分ぐらい落ちるんじゃない?」 「しょ、しょうがないですよ。今は時期が悪いですし、できるだけ学園も即戦力となる子達が欲しいんですよ」  演習場の仮設待機室で三人の少女たちが折りたたみ式の椅子に座りながら今試験の概要が書かれた報告書を囲みながら読んでいた。西都の方言でしゃべるウェーブがかかった栗色の髪をした眼鏡の少女とオレンジ色の髪をツインテールにした軽い口調の少女は言外に今試験のあまりの難しさを非難し、藍色の髪をツーサイドアップにしている背が高い少女がそれをたしなめていた。すると待機所のドアが開きアキとナーシャが入ってきた。 「レイス、ミリア、マルシェ。無駄話はそれまでだ。それぞれ所定の位置で待機しろ」 「はいはいっと」 「了解でーす」 「わ、わかりました」  ナーシャの言葉に反応するようにレイス、ミリア、マルシェはそれぞれ応答し待機所から出ていく。後輩たちが出ていくのを確認するとナーシャはゆっくりと息を吐き、さっきから無言のまま犬の人形を眺めていたアキに対し話しかける。 「どうだ?翼狗の大総裁(グラシャラボラス)に何か反応はあったか?」 「とりあえず、今のところはないわね。でもあの子たちの中に適合者がいるなら封魔傀儡(デモンドール)動かし始めればすぐに反応するはずだわ………さぁ私たちも行くわよ、ナーシャ」 「分かった、アキ」
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