第一章:急転の実技試験

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第一章:急転の実技試験

 停留所に降りたリーンたちはそのまま待機していたと思われる教師に連れられ歩いていた。最初は自分たちの教室に案内してもらえるのかと思った少女たちだが連れてこられたのは校舎とほぼ同程度の広さのグラウンドだった。そこにはほかの街区から来たと思われる少女たちも待機していた。  この学院は実力さえあれば奨学金を出して入学させるほどの実力至上主義の学び舎である。自分たちが住んでいた地域では一人も見かけなかった下流階級の少女たちや、このマリオネツトで社会的頂点に存在している上流階級の少女たちもその姿が見られる。  この様子を見ると階級で人を差別しないソロモン女学院の懐の大きさを感じることができる。  リーンたちが到着することを確認すると演習場で腕組をしていた教官と思われる凛々しい女性が集まった全員に声を掛ける。 「全員注目!これより重要な説明を行う合格通知書に書かれた番号順に諸君らから見て左側から縦20人ずつに並ぶように駆け足!!」 『は、はい!!』  教官の強い言葉に反応したのか少女たちはすぐ様並びだす。階級混合で並ばれているため自分の場所を探すのに手間取ったがリーンは81番だったため比較的簡単に並ぶことができた。全員が並び終えたのを確認すると教官は本題の話を始める、  あまりにも不意打ちな本題を。 「完全に並び終えるまで1分半強……。まぁいい、では改めて。今から諸君らにはこの演習場にて最終合否判定を兼ねた実技試験を行ってもらう!!」 『?!!』  その言葉に誰もが絶句した。自分たちはこの学院に二日間の筆記試験をクリアして合格通知書を手に入れることができたのにまさか入学初日に合否を賭けた実技試験を受けるなどとだれが分かるだろう。 「待ってください。なんですかそれは?筆記試験の時はそんなことを一言も言っていなかったと記憶していますが?」 「そうですわ、こんなのは横暴、理不尽ですわ!!」  白髪をおさげにしている少女と薄い紫色の髪を立てロールにしている少女たちが教官に反論をし始めた。手入れが整った髪や上品な制服の着こなしから上流階級の息女であることが分かる。  他の上流階級少女たちも便乗するように抗議を始めようとしたが教官はそれに小さく一喝し黙らせる。 「……黙れ」 『……!!』 「なぜこんな抜き打ちの試験を行うか、と聞いたな?そんなことを決まっている危機的状況下では机上や演習では絶対に見ることができない諸君らの本質が見えるからだ。 横暴?理不尽?そんなもの王国を守護する遣い手(コマンダ)となればそんなものは日常のようにやってくるぞ。……私は諸君らもその覚悟があるからこそこの学園の入学を希望したのだと思っていたのだがな?」  そう言われてしまうともう言い返すことはできない。上流階級の少女たちは全員黙った。それを確認すると教官は一息つき今度こそ試験について話し始める。
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