15人が本棚に入れています
本棚に追加
2.
「あと、希望下さい」
サラリーマンは、やっぱりそう言った。
「申し訳ありませんが、当店で希望は取り扱いしておりません」
「…そうですか、ありがとうございました」
ちょっと笑って哀愁のある背中が去って行く。
「やっぱり来たね」
店長がこそっと寄ってきて言う。
「そうですね」
「何しに来てるんだと思う?」
「?買い物ですよね?」
「そうじゃなくて」
「希望が買いたいんでしょう?」
「そんなの売ってないの分かってるのに?」
「だから、ありません、ってお伝えしてるんですけど」
「……」
「……」
「…天然?」
「は?」
「…いや、絶対君目当てだと思うんだけど」
「はぁ。でも、毎日来ますよね?」
「それは君のシフトを知らないからでしょ?レジはいつも君のとこ並ぶよね?」
「まぁ、そうですね」
「狙われてるよ、きっと」
「あ、それ、友人にも言われました。それ、ヤバくない?!しかも、毎日でしょ?!絶対ヤバいよ!!って」
見た目ギャルの友人の真似をして言うと、店長は、一瞬固まった。
「…友人ってギャル?」
「はぁ、そうですが?」
「モノマネ上手かったんだね、びっくりしたよ…」
「ありがとうございます」
まぁ、いざとなったら助けるからね、って言われた。お願いします。
最初のコメントを投稿しよう!