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次の日、風がいつもより強い中再び僕は外で洗濯物を干していました。
すると、昨日の黒髪と金髪の若者が訪ねてきたのでした。
「緑、山へ帰るぞ」
「やだ!」
唐突に金髪の男に手を握られた僕は、大きく拒否をしました。
「もう、魔法が解ける。直に、緑も鯉のぼりの姿へと戻ってしまうからその前に戻ろう」
黒髪の男が諭すように話し掛けました。
「魔法?何、それ……」
大きな瞳を瞬かせて僕は尋ねました。
「風神様が、俺たちの望みを叶えて一瞬だけ人間にしてくれたんだ」
「一瞬、だけ……?」
僕は、どのような条件下で人間になった経緯を知り、愕然となりました。
……この姿は、永遠のものじゃないんだ
その瞬間、昇琉を受け入れたばかりの僕は胸が急に苦しくなり、世の無常を知ることとなったのです。
「そうだ。満月の今夜、俺たちは人間から元の姿へと戻ってしまう。その前に、早く山へ戻らないと存在自体が消失してしまうんだ。だから、早く一緒に戻ろう!」
黒髪の男がそう言うなり、金髪の男は僕を力づくで引っ張ろうとしました。
「痛い!!昇琉さん、助けて!!!」
大声で叫んだ僕の口を、金髪の男は大きな手で塞ごうとしました。
その瞬間、アトリエにいた昇瑠さんが姿を現しました。
「誰だ、お前ら!!緑を放せ!!」
「昇瑠さん!」
ヒーローのような昇瑠さんの登場に、僕はひどく安堵しました。
「昇瑠様、今までウチの緑が大変お世話になりました。だが、緑はもう戻らなければなりません」
そう黒髪の男が僕と昇瑠さんの間へ立ち、説明しました。
「緑……」
昇瑠さんは、少しだけ驚いたような表情をしましたが、次の瞬間僕が目の奥に隠した脅えた表情を見逃しませんでした。
何と、彼らへと反逆に出たのです。
「緑は、俺の大切な人だ!だから、これからもずっと一緒にいるんだ!!」
その瞬間、僕が群れから離れた時のような激しい突風が吹きました。
「風神様だ!」
金髪の男は叫びました。
「まずいな……」
黒髪の男も、眉を寄せて呟きました。
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