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「予定より、早まってしまったようだ。緑、本当にもう帰らないと!」
金髪の男が突風の中で叫びました。
次第に、突風はその場にいた僕たち鯉のぼり3人だけを包み込むように取り囲みました。
「それでも……それでも、僕は昇瑠の傍にいたいんだ!たとえ、この姿が無くなっても僕は昇瑠をずっと愛してる。……運命なんだ」
そう叫びながら、僕は足元へ視線を向けるとすでに足元には緑色の鱗が浮き出てきていました。
刻一刻とタイムリミットが迫ってきていることを物語っていました。
「緑、早く昇琉様にお礼を」
黒髪の男は、そう告げました。
「昇琉さんと離れたくない!!」
僕はその一心で、羽交い締めする2人と突風へと体当たりをしました。
その瞬間、昇瑠さんは激しすぎる突風の中へ突っ込み、僕を抱き留めてくれました。
『緑、お主はどうしても“人”として生きていく道を選ぶのか』
どこからともなく囁く声が聞こえてきました。
昇琉さんにもその声が届いたようで、僕を抱き締める手を更に強めました。
「……僕は、“人”として生きる道を選んだんじゃないんです。“昇琉”さんと共に生きていく道を選んだんです!だから、」
そう言いかけ、突風は怒ったように激しく竜巻を起こしました。
あまりの激しさに、僕は目を開けていることが出来ず暗転してしまいました。
「緑ぃ!!!」
遠のく意識の中で、3人が叫ぶ声が聞こえました。
僕は一体、この先どうなるのでしょうか。
そう静かに思案したのでした――。
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