運命の願い

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僕は、鯉のぼりです。 とある地方の慣習で、毎年4月の半ばから5月の子どもの日まで大河の上を、橋が架けられたように沢山の鯉のぼりが青空へ並べられ日々気持ち良く泳いでいます。 仲間は、100匹。 多種多様な色と大きさの鯉のぼりがいます。 僕の両隣りは、鯉のぼり界でも有名な巨匠が作ったとされる美形の2匹です。 黒色と金色。 サイズも、大きすぎず小さすぎずの中途半端な僕とは違って立派な大きさの鯉です。 ちなみに、僕はそれ程鮮やかでもない緑色をしています。 だから、いつも人間が僕たちを見に来ると両隣りの2匹を見上げて感嘆の声を上げた後、その間に挟まれるように泳ぐ僕が視界を邪魔し勝手にがっかりするのです。 「ねぇ、ママ。なんであの立派な鯉の間に緑のちっちゃいのがいるの?」 とある人間の子どもからの声です。 酷い話しですよね。 僕だって、できたらこんな派手な2人の間に挟まれたくなかったですよ。 5月の風に合わせて、そっと溜め息を付くと両隣りの2匹は俺へと話し掛けてきました。 「おい、緑。何、溜め息付いてるんだよ」 僕の左側に位置する黒色の鯉のぼりが、先に話し出しました。 黒の方は、大人の魅力満載で落ち着いたヤツなのです。 「ひゃっ!」 気付かれないように溜め息を付いたつもりが、バレてしまい思わず変な声を上げてしまいました。 「何が『ひゃ!』だよ。お前、本当いつもアホだな」 そう意地悪そうに会話に入ってきたのが、僕の右隣りにいる金色の鯉のぼりで生意気な喋り方をするチャラいヤツです。 僕は、この金色がどうも昔から苦手です。
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