運命がカタチとなる

4/10
前へ
/18ページ
次へ
「……どうした?言いたくないのか?」 作務衣姿の男は、ほぼ裸の僕に着ていた上着を掛けてくれました。 脱いだ上半身は、とても鍛え上げられていて胸板が厚く、腹筋も綺麗に6つに割れていました。 格闘技でもしている方なのでしょうか。 時々、テレビのバラエティ番組の取材でそういう方が僕たちの元へと訪れることがあるので、知っています。 それより、僕はここがどこなのか分からず男へ尋ねました。 「ここは、あの山の(ふもと)の街だ」 そう言って、男は綺麗に(そび)える山を指しました。 ……あぁ、僕はあの山にある大河の一角を泳いでいたから、だいぶ風で飛ばされてきたのですね。 どうりで、全身があちこち痛い訳だ。 「……僕は、あの山から来ました。あの山以外から出たのは初めてなんです」 男が指していた山を、僕も一緒に指してここへの経緯を簡潔に説明しました。 勿論、鯉のぼりだということは伏せて。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加