119人が本棚に入れています
本棚に追加
それから僕は、男の話を沢山聴きました。
名前や歳、そして生い立ち。そして、これからのこと。
男の名前は、鯉代昇瑠さんと言うそうです。
年齢は、37歳でバツイチ独身子なし。独り暮らしだそうです。
僕は、昇瑠さんの前では“緑”と名を名乗りました。
昇瑠さんの作る料理は、とても美味しくて人間はなんて美味しい物を普段から食べているのだろう、とひどく感激しました。
どうりで、すぐにお腹が空くはずだ、と思いました。
昇瑠さんは、好きなだけここにいて良いと言ってくれました。
周囲から好奇の目で見られる緑色の髪の僕を、恥ずかしがることもなく隠そうともせず色々なところへ連れて行ってくれました。
本当に良い人です。
早朝から近くの河へ昇瑠さんと一緒に水を汲みに行き、鯉のぼりの染色のお手伝いをします。
昼には昇瑠さんが作った美味しいおにぎりを頬張り、家の中の掃除と洗濯をします。
夜は、夕餉のお手伝いをします。今夜は、炊き立てのご飯に豚汁。副食は、魚の煮付けに採れたて野菜で作ったお浸し、そして自家製の糠漬け。
天然水や採れたてのものを使用するので、どれも美味しいです。
お風呂に入った後は、1つしかない布団で昇瑠さんと抱き合うように眠ります。
昇瑠さんの隣りは、本当にホッとします。
まるで、昔から知っていたかのような安心感があります。
出逢った時からそれは変わりません。
僕は、ずっと人間でいたい。
そう思いました。
最初のコメントを投稿しよう!