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「これは……ネコ?」
お兄ちゃんが始めて持って来てくれた雑貨は、ネコのフィギュアだった。
人より少し小さなわたしの手に収まるくらいで、とても可愛い。
「たまたま駄菓子屋の前で見かけてよ。 可愛いだろ」
「うん、可愛い。 お兄ちゃんが言うと気持ち悪いけど」
「実の兄に何て口の利き方だっ」
人差し指でつむじを回され、「ごめんなさーい」と平謝りしておいた。
「ネコって言えばさ、百万回生きたネコって知ってる?」
「俺、あんまり本って呼んだことないから名前しか知らないな」
「……そっか」
なるべく、声の調子を変えずに言ったつもりなのに、お兄ちゃんはわたしの手を優しく握ってくれた。
まるでわたしの胸裏なんて全て分かっているという風に。
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