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無理はしてる。だけど辛いとは思っていない。 ミライが患っている病気は移植が必要で、費用に一千万以上がかかるそうだ。俺の家はとても裕福とは言えず、ポンと出せる額ではなかった。 故に俺は自分のできる範囲で資金を調達しようと、仲間を募ってバイトや募金活動を始めたのだ。 しかし現実とは無慈悲なもので、いくら必死に動き回っていても病は俺たちを(あざけ)るように進行を止めてくれない。 俺は自責に駆られて悲愁(ひしゅう)に陥るミライを元気付けるために、ささやかながらもプレゼントを贈ろうと決めたのだ。 もちろん移植にあてる資金が優先なので、節約を強いられるのは絶対だった。 そのために、美術館では記念品を貰うために人数をカウントし、駄菓子屋のカプセルトイを吟味して回す習慣がついていた。 今日、名前を知らない子に話しかけられたのは焦ったけど、何とか誤魔化せていただろう。 仮に怪しまれたとして、俺はたかが百円の雑貨だろうと、ミライの百点満点の笑顔を引き出せるなら、他者の目を(いと)わない心を作り上げていた。 お金じゃなくて、喜楽で病気が治ればどれだけ楽か。
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