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おばあさんが、おじいさんに声を掛ける.
「ちょっと、本屋へ行ってきます」
「ワシも行く、ちょっと待ってくれ」
本屋へ向かう二人.
「お前は何を買うつもりなんじゃい」
「いつもの女性週刊誌ですよ」
「ほー、そうかい」
「あなたは?]
「ワシは、ただの散歩じゃ」
「はー、そうですか」
ふたりは本屋の前で知人に遭う.
「おー、久しぶりだなぁ」
「ご無沙汰してます」
「元気にしてたか」
「はい・・・今、施設に入っているんです」
「そーかー、施設かぁ・・・なん・・・どこの?」
「XX町の施設です」
「XX町の・・・そーか、施設かぁ・・・いい、そりゃいい、安心だ・・・そーか、それで幾つになった?」
「65になりました」
「65かぁ、そーか、もうそんなになったか・・・そーか、そーか・・・まぁ、じゃ、元気でな」
「はい」
「これ」
おばあさんがおじいさんに1万円札を手渡す.
「高ちゃん、ちょっと待ってくれ!」
おじいさんが遠ざかる男の後ろ姿に声をかける.
おじいさんは、男に近づいて行く.
「これな、取っておいてくれ」
「あー・・・どうも、すみません.有り難く頂戴します」
男は去っていった.
おじいさんとおばあさんは本屋へ入っていく.
(了)
―― あとがき ――
WEB絵本「本屋の前で」
著者:茜町春彦
投稿サイト「パブー」で公開した作品です.こちらに移植しました.
初出:
茜町絵本『本屋の前で』2016年4月30日発行
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