僕の愛情は背徳と交錯する

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「もしかして、辻さんのお兄さんですか?」  その面立ちは、結愛を男子にしたらこんな風になるだろうな、といった感じなのだ。  栗色の髪、白い肌。大きな瞳に柔らかな鼻梁。整った唇に、男子にしては華奢な体つき。  ただ、背丈だけは崇より高かった。 「辻 敏樹(つじ としき)だ。君の言うとおり、結愛の兄だよ」  そこで敏樹は軽く手を上げ、タクシーを止めた。  素早く乗り込むと、きょとんとしている崇の腕を掴んで引っ張った。 「君も乗るんだ」 「ええっ!? な、なぜですか!?」 「道中、話すよ」  崇は、まるで誘拐のように敏樹に連れ去られてしまった。
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