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道中話す、と言ったわりには、敏樹は終始無言だった。
崇は居心地の悪い車内の空気に、押し潰されそうだった。
だから、タクシーからようやく降りた時には溜息をひとつついた。
しかし、吐いた空気をもう一度吸い込むように、崇は息を飲んだ。
敏樹の自宅、と連れて来られたそこには、長く高い塀に囲まれた豪奢な邸宅が立っていたのだ。
結愛ちゃん、やっぱりお嬢様だったんだ……。
ぼうっとしてしまった崇に、敏樹が声をかけた。
「さ、中へ入ってくれ」
敏樹にいざなわれるまま、崇は屋敷へと入っていった。
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