僕の愛情は背徳と交錯する

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 父は仕事、母は付き合いのある奥様方とお食事会で留守だ、と敏樹は言う。  言いながら、長い廊下をどんどん歩き、エレベーターに乗り、また廊下を歩き、ようやく敏樹の部屋だという場所までやって来た。 「そのうえ結愛も今日はピアノでいない。少々、退屈でね」 「はぁ」 「だから、結愛の新しい彼氏がどんな人間か、ちょっと見てみようと思ったのさ」 「……」  暇つぶしに連れて来られた、と知って崇は憮然としたが、他ならぬ結愛のお兄さんだ。  ここは愛想のひとつも振舞っておかなくてはならない。
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