暁を覚える桜

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「今行く豊ヶ岳で異変が無いか見るだけだよぉ。特に万年桜の有る南東の方角を重点的に見て来て欲しいらしいよぉ」 「万年桜?」 「豊ヶ岳に自生してる季節問わずに花を咲かせ続ける桜さぁ。昔から、その周辺で事故が絶えなくてねぇ。数年前に観光名所にする予定も有ったけど、その最中に人死にが出て頓挫しちゃったみたいだよぉ。ほら、あれじゃないかい」 後部座席から恭治が身を乗り出しながら指を差す。 そこには一本の桜の気が生えていた。太く逞しい幹から、空を目指す様に伸びた枝には美しい桃色の花が咲いている。 自分を自分だけを見てくれと言わんばかりの圧倒的、存在感を放っていた。
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