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避けられぬ不穏
だらりとぶら下がる右腕から血がぼたぼたと
滴り落ちている。
「災難男とはこの程度か?」
目の前のタキシードを着た男が血に染まった自分の左手の指を舐めている。
災難男? それが自分の事だと理解するのに時間が掛かった。
自分が日比野 景壱だという事も今、漸く思い出したのだ。
恐らく、血が流れ過ぎ考える力が鈍っているのだろう。
「殺せとは言われてないが、気が変わった。今、楽にしてやろう」
男が向かって来る瞬間、景壱は無意識に左手を男に向けていた。
何故、自分が殺されなければいけないのだろうという怒りを抱いたまま。
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