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次の土曜日も、朝は晴れた。
前の日に、行きたいところがなければ付き合って、とキシが提案してきたのは、スカイツリーだった。
「おっさん二人でかよ」
僕が電話口で呆れると、キシは、
-おっさんとか言うな。
と笑っていた。
-馬鹿は高いとこに登りたがるって昔から決まってんだよ。
「ふん」
-行ったことある?
「ないです」
-じゃ、行きましょう。
その後、キシは、
-この間、ごめんね。
と言った。
「なにが?」
-会った時のこと。アナタがどう思ったかはわからないけど、俺は反省した。
「まあ。謝られてもね」
-うーん。明日話す。
「そうだ、傘返す?」
-あー絶対持ってくるなよ、歩くんだから。
「歩くって」
-晴れそうだから、浅草で待ち合わせよう。浅草寺見てから歩いて行こう。
地下鉄の改札で待ち合わせたキシは、この間と同じジャケットを着ていた。その裾の辺りを掴んだ感触が手によみがえった。
「土曜だから、こんなに人がいる?」
地上に出て、キシが言う。
「週末なのと、まあ人気があるんじゃない?もう夏休みの人もいるかな」
昼間にキシと並んで外を歩くのは、ほとんど初めてだ。
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