4人が本棚に入れています
本棚に追加
******
「煙草、好きだよな、二階堂先生。大丈夫か?」
午後。生徒たちが部活に精を出している時間帯。顧問の部などない俺は、いつも屋上で煙草を吸う。そして、こんな感じで3年の学年主任を務める、諏訪利行が同様に煙草を咥えながらやってくるのもいつものことだ。
「……そんなこと、諏訪先生に言われても説得力ないでしょう」
「だって好きでしょ、煙草。毎日この時間帯に必ずここにいるだろ?」
「俺は好きー」と諏訪はライターを取り出して火をつける。若干の焦げ臭い匂いが鼻を通り抜け、不快感を覚えた。
諏訪とは幼稚園からの友人で、実家の時は隣の家に住んでいた。まあ所謂幼なじみ、というやつだ。今現在は英語教師、体育教師として互いに接している。
しばらくの間、並んで生徒の姿を眺めながらいると、ヴヴヴとスマホが揺れる。それに気づき画面を開くと。
「……またか」
案の定。奴からの連絡だった。淡々と打ち出された文字は、端的に、でも重要な言葉だけ。
『いつもの場所で待ってる。諏訪先生とつるんでないで早く来い』
「っとにめんどくせぇ…」
「ん、秋本からか?」
俺の独り言に反応した諏訪が、奴の名前を口にした。なんとも憎たらしい名前。でも、そいつは俺の。
行く気はあまり出ないが、屋上からあの場所が近いので仕方なく寄ることにした。歩を進めて諏訪の横を通る。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」
最初のコメントを投稿しよう!