EP.0

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
****** 「煙草(たばこ)、好きだよな、二階堂先生。大丈夫か?」 午後。生徒たちが部活に精を出している時間帯。顧問の部などない俺は、いつも屋上で煙草を吸う。そして、こんな感じで3年の学年主任を務める、諏訪(すわ)利行(としゆき)が同様に煙草を咥えながらやってくるのもいつものことだ。 「……そんなこと、諏訪先生に言われても説得力ないでしょう」 「だって好きでしょ、煙草。毎日この時間帯に必ずここにいるだろ?」 「俺は好きー」と諏訪はライターを取り出して火をつける。若干の焦げ臭い匂いが鼻を通り抜け、不快感を覚えた。 諏訪とは幼稚園からの友人で、実家の時は隣の家に住んでいた。まあ所謂幼なじみ、というやつだ。今現在は英語教師、体育教師として互いに接している。 しばらくの間、並んで生徒の姿を眺めながらいると、ヴヴヴとスマホが揺れる。それに気づき画面を開くと。 「……またか」 案の定。奴からの連絡だった。淡々と打ち出された文字は、端的に、でも重要な言葉だけ。 『いつもの場所で待ってる。諏訪先生とつるんでないで早く来い』 「っとにめんどくせぇ…」 「ん、秋本からか?」 俺の独り言に反応した諏訪が、奴の名前を口にした。なんとも憎たらしい名前。でも、そいつは俺の。 行く気はあまり出ないが、屋上からあの場所が近いので仕方なく寄ることにした。歩を進めて諏訪の横を通る。 「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!