514人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
何度目かの目覚め。
(おなか すいた)
また音が聞こえ、灯りと足音が聞こえる。格子に近づこうとして慌てて下がった。
(むち)
大人しく男が入ってくるのを待つ。
(いい匂い)
物も言わず男の足にしがみついた。自分から男のモノを剥き出しにして口に頬張る。懸命に尽くした。そしていい匂いを手に入れた。
そんなことが何回か続く。
灯りが幾つも見え、複数の足音が聞こえた。いつも通り牢の奥に下がる。何本もの松明が眩しくて手で光を遮った。
「仕上がったか?」
「多分」
「よし、連れて来い」
引きずり出されて両脇を抱えられる。歩く力が無い。逆らうなど欠片も考えない。地下を出ると目が眩んだ。昼間の明るさが目を刺す。周りを見もせず目を閉じていた。
水の音がする場所に突き飛ばされた。そばに人を感じて目を開けた。
「の、くす?」
「ルクス! ルクスっ!」
酷い姿だ。悪臭がする。それでも抱き合った。もう離れたくない。互いのことしか見えない。
そのまま何度も水を浴びせられた。女がそばに来て二人を泡で包み、洗った。その間も手を離さない。今度離れたら二度と会えないような気がした。
きれいにされて、裸のまま連れて行かれる。そこは大きな台所のように見えた。暖炉があり、地下は冷え切っていたから久しぶりに暖かい。
自分たちを買ったあの男が座って待ち受けていた。
「どうだ、地下は居心地が良かったか。きれいになったんだ、また地下に戻るか?」
声も出ず強く抱き合う。怯えが目に走る。
「どうした、じゃじゃ馬。すっかり骨抜きになったな。二人とも離れたくないか?」
必死に二人で頷いた。
「はなれたく、ないです」
「いっしょが、いい…です」
「たいした進歩だ。なら何でもするか? 言うことを聞いていれば一緒にいさせてやる。飯も食わせるし水もやろう。どうだ?」
「おねがい、します」
「はい」
最初のコメントを投稿しよう!