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男がそばにいる大きな男に顎で合図する。
焼けるような匂いがした。振り返ると大きな男が炎が燃え盛る暖炉に何かを突っ込んでいる。やがて真っ赤に焼けた鉄を持って男が近づいてきた。
本能だった。ノクスの手を掴んで立ち上がろうとする。けれどそれは出来ず、ノクスに覆いかぶさる。
「だ、め! だめ!」
「ルクス?」
「だ! め!」
「何でも言うことを聞くんじゃなかったのか? また別々にするぞ。今度は同じ地下じゃない。ばらばらにどこかに売る。それでいいか?」
絶望の目を向けた。ノクスを抱き締めて目を閉じる。
「いい子だ。これは俺のものだという所有印だ。右肩と背中に付ける。大人しくしていたらその後はしばらくいい部屋に二人で休ませてやろう」
右腕を取られた。ノクスに左腕でしがみついた。肩に近いところでジューッという音がしてルクスは金切り声で叫んだ。その恐ろしい叫びでノクスは恐怖に包まれた。
「ルクス! ルクス、何をされたの!?」
続けて背中の真ん中が焼ける。絶叫が上がり息が止まるほどにその声が続いた。
ルクスを抱き締めようとしたノクスの右腕が掴まれる。
「ぎゃぁあああああっ!!!」
気を失うことも出来ない。頭の中から全てが消える。あるのはただ痛みと熱だけ。それが今度は背中から生まれた。
二人で呻き声をあげ涎を垂れ流し、床に這いつくばって痛みから逃れようとした。だがそれは自分を放してくれない。
「よし。褒美だ。つらいのは2日くらいだろう。お前たちの稼ぎに期待して3日の休みをやる。贅沢をしろ。連れて行け」
二人は抱き上げられて小さな部屋のベッドに俯けに横たえられた。触れ合った手が自然に握り合う。痛みでそっと息を継ぐことした出来ない。
「後で世話をする女が来る。面倒を見てもらえ」
それだけ言って、大きな男は出て行った。
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