死神モルス

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 4日目の朝。ここに自分たちを運んだ大男が入ってきてルクスの体が強張った。 「ルクス?」 「来い。モルス様がお呼びだ」 ベッドから下りようとしないルクスが引きずり降ろされた。 「ルクス、ルクス!」 「お前はついて来ないと途中で置き去りにする。迎えにも行かない。それっきり会えなくなる」  慌ててルクスの体を探すが引きずられ始めたルクスに手が届かない。 「ノクス! 早く!」 「お願い、置いていかないで! ルクス!」 けれど速度は落ちない。ルクスは声を出し続けた。 「こっち! こっちだよ、ノクス!」 その後を立ちあがって壁を辿っていく。 「階段がある! 気をつけて!」 遠くなり始めるルクスの声。 (階段だ…ルクス、どこ?) 「ずっと上るんだ! 早くっ!」 必死に上った。途中幾つかの踊り場を経て廊下になる。 「ルクス! ルクス!!」 (どうしよう、階段が無い) 「ノクス!!」 意外と近くから返事が聞こえた。 「ルクス、どこ!?」 「右に来て! そこに入り口があるから!」  壁を触りながら歩いた。もう近いのだと急に安心感が出て涙が落ちる。地下牢で別々の場所に入れられたことで離れる怖さを心に刻み込まれている。 「よく来れたな。それは褒めてやる」 (あの時に聞いた声) 市場で買われた時、焼きごてをつけられた時。 「モルスってあなた?」 とたんに背中にムチが飛んで来た。 「うあっ!!」 「ぶたないでっ、ノクスは何も見えないんだ!」 「今はやめてやれ。ここを出てからが教育の始まりだ」 「はい。モルス様に礼を言え」 「ありが、とうございま、す」 「ありがとうございます! だから……」 「俺はしつこいのは嫌いだ」 すぐにルクスは口を閉じた。 「同じことを言うな。言われたことに口答えするな。質問は聞き返さずすぐに答えろ。ここでの決まりを教えてやる。売られたのは初めてだな?」 「はい」 「答えるのは一人だけか?」 慌ててノクスも「はい」と答えた。 「許すのは今の一回だけだ。いいな?」 「はい」「はい」   
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