競り

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 ガタガタと走る馬車がやっと止まって下に下ろされた。体の中がガタガタといつまでも馬車の余韻を引き摺っている。 目隠しを外された。 「ここだ。どうだ、こういうのは初めて見るだろう」 「ここって……」  城ほどじゃないが大きく真っ白な建物だ。どちらかというと平たくて2階くらいしかなさそうだが、とにかく広い。第一形が城とはまるで違う。高い塔は無く、四角だ。大きな門は開かれており、次々と入り口の男と話しては足に鎖を付けられた者たちを引き渡していく。  男たちはそのまま正面の大きな階段を上って奥に入っていった。そこには屈強な男たちが番兵のように立って周りを見据えていた。  奴隷たちはそこから右奥に並んで連れて行かれる。時々反抗する声が聞こえ、その後「ぎゃぁっ!」「やめてぇ!」などと聞こえてくる。 「今からここでお前たちは競りにかけられるんだ。世話して躾けてやったんだ、しっかりと自分たちを見せてやれ。俺は高値でしか売るつもりが無い。値が低かったら一生囚人の相手をする監獄に売り飛ばす。いいな」  船長は入り口にいた男に話しに行った。自分たちを指差すと男がイヤな笑いを浮かべ舐め回すように視線を送ってきた。   
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