心の変化

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 離さないノクスの手をそっとルクスは引き離した。 「行くよ。兄さま」 見えない目を必死に声に向けた。少しでもそこに影だけでも見たいと。見えないことが悔しい。辛い。悲しい。 (一目……一目だけ、かみさま、かみさまがいるって聞いたよ。お祈りすればいいって。聞いてくださるって。今! 今、一目でいいんだ、ルクスを見たい! お願い!) ばたん ドアは閉まった。そのままノクスはベッドに突っ伏した。 「よく離れたな」 いくらか声が和らいでしまうのはどうにもならない。 「客を。取ります、一人でも多く。上がれば一緒にいられるようになるんでしょう?」 「……上がってからモルス様に縋れ。あの方のお気持ち次第だ」 「そんな……」 ルクスは立ち止まった。 「それじゃ、話が違う! 一緒になれると言った、一緒にいられるようになると」 「騒ぐんじゃない! いいか、騒ぐな、二度と。こんなこともモルス様のお耳に入らないようにしないとだめだ。気をつけるんだ、マレ。誰かがモルス様に告げ口したらお前たちは一生会えなくなるぞ。いいか、反抗的な態度も言葉も止めるんだ」  唇を噛む。血が出そうになるのを感じて大男はルクスの顎を掴んだ。口が開く。 「自分が商品だということを忘れるな。客を満足させるんだ。分かったな?」 きつく目を閉じて頷いた。敗北感しかない、自分とノクスの間に大きく立ちはだかるモルスに。 (いつかきっと……殺す。モルス、お前を殺してやる!) ルクスの目が怒りを含み始める。   
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