競り

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「皆さん、ご注目ください」 周りのざわめきが静まった。 「この商品は今日入荷した中でも逸品です。いや、この競りが始まって以来かもしれません。正真正銘の貴族の子どもたちです。見ての通り、双子。しかもこの容姿。そそられること間違いなし! 檻に閉じ込めて飼うも良し。毎晩両脇に抱くも良し。徹底的な仕込みまではされていませんので、今ならお好みの通りに作り替えることもできます。片方は目が見えませんが、それがまたいい!」  溜息をつくのが聞こえる。ルクスはノクスを背中に庇った。 「見ての通り、まだ自分たちの境遇さえ理解していない。屈服させる悦びも味わうことが出来ます。では、金貨100枚から!」  ルクスは目を見張る。金貨100枚。兵たち、一人一人への払いが5金貨ほどだった。これでは20人の兵が養える。 すぐに手が上がった。脂ぎった太った男。 「150だ」 次の手が上がる。 「170」 「180!」 「200!」 (バカげてる……)  ここにいるのは人間たちじゃない。こんな連中に売り飛ばされるのかとぞわりと足元から鳥肌が立つ。 「250! 私のところに来ればずっと可愛がってやるぞ!」  最初の太った男だ。舌なめずりをしているのがおぞましい。そこからもどんどん値が上がっていき、恐ろしいほどだ。 「400! これが最後ですか?」  さすがに値が上がり過ぎたのか誰の声も上がらない。太った男が勝ち誇ったように周りを見回す。 (あの男に? あれに買われる…のか?)  おぞけが立つ。触れられたくない、ここでノクスを突き刺して自分も死にたい。 「では、400金貨…」   
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