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46話
激戦だった。
ほんとに大変だった。
「主、御客様ですが」
客ねぇ。
さっきの連中の関係者かね。
「この部屋はさすがにまずい、申し訳ないが食堂で待ってもらってくれ」
「わかりました」
「それと敵対したそうなやつがいたら、好きなようにしろ」
「承知しました」
どんな人が来たのやら。
「はじめまして、ヒダリ様」
適度に整った服装。
一見友好的そうに見える表情。
また、手強そうな人がきたね。
「私はレイラ・デルバレバ。この都市の市長をやっています」
「はじめましてデルバレバさん」
「先程は多数の学園関係者がご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ありません」
「はは、さすがにいきなり刃を向けられたときは驚きましたね」
「重ね重ね申し訳ありません」
「責任者の方に責任を取っていただきましたし、もうこの件は気にしておりませんよ」
「そう言っていただけると助かります」
「それでご用件は?」
「そうですね、単刀直入に申します。ヒダリ様の治めるガンドラル村と同盟かそれに類するものを結びたいのですが」
あるかないかもわからんような村と同盟ねぇ。
「理由を伺ってもよろしいですか?」
「簡単ですよ。ヒダリ様、あなたのそのずば抜けた武力。その力がこの街に向かないようにする。ただそれだけですよ」
「これだけ大きな都市の長がえらく警戒されますね」
「謙遜はやめてください。私もそれなりの外敵からこの街を守ってきました」
へぇ、この人はそれなりの戦闘経験者か。
「それらの外敵から我が街の戦士を守るための防御フィールド。私が生まれてからこのかた一度も破られなかったあのフィールドをあなたは容易く撃ち抜いた」
一度も破られたことがないねぇ。
時空魔法が使えるやつがいないと、対抗手段もとりにくいってことかね。
「話はわかりました。ですが今すぐに回答することは難しいですね」
「わかりました。検討はしていただける、ということで理解してもよろしいですか?」
「検討はしますよ」
「では、よいお返事を期待します」
淡々と話を進めてきたな。
しかも求めてくるのは同盟か。
まあ、別に急いで返事をする必要もないだろう。
「ああ、そういえば。学園に関してですが、必要な処理は済ませてありますので、もし講義を受けるのであればご自由に受講してください」
なんというか、そつがないね。
「最後に。あなたが殴り飛ばしたエーラというのは私の娘でして」
お、最後に爆弾か?
おんなじ姓だし、身内かなと思ったが娘だったか。
「あの鼻っ柱をへし折っていただき、本当にありがとうございます」
ん、話が予想外の方向に。
「ああ、娘のことは本当に気にしないでください。娘のしたことはこの国そのものを危険にさらす行為。あの程度で許されるのであれば安いものです」
あれ?
「運良く一命はとりとめましたし、自身と相手の実力差を理解した上で、弱者としてどう振る舞うべきかを考えるよい機会になりました」
本気で感謝されてる感じが……
「この街の防衛機能によって守られているだけなのに、自分達が強くなったと勘違いして、増長する子が多くて困っていたところだったんですよ」
なんだろうね、上手く利用された?
「結果としてヒダリ様のお力を利用させていただきました。申し訳ありません」
「何故ここまで明け透けなのでしょうか」
「下手に隠しだてして、今後の関係がこじれる方がよほど損害が大きいと判断してるだけですよ」
なんだろう、蛇に絡み付かれているような、この何とも言えない空気は。
「やはり、あそこまで強い男性ですからね。ご縁は大切にしたいかと」
なんか目付きが怪しいんですが!
「もう少し早くお会いしたかったですね」
どういう意味ででしょうか。
「もしよろしければ、お詫びの印というのもおかしいですがエーラをもらってやっていただけませんか?」
娘を売り込んできたぞ。
「申し訳ありませんが」
「そうですか。エーラは好みに合いませんか」
「いえ、好みとかではなくてですね」
「ではエーラの姉か妹では?」
話きいてくれよ。
「ですから」
「んーそれとも、やはり私が」
やはりの意味がわかんねーよ。
「あの、デルバレバさん」
「そんな他人行儀な、是非ともレイラと呼んでください」
いやいや、他人だし。
ついさっきまで顔も名前も知りませんでしたよ。
「さあ、是非ともレイラと」
「それ以上旦那さまに近づかないでください!」
「デルバレバ様、お遊びがすぎます」
まさかのポンコツ参戦!
この流れはヤバい。
俺の勘がビンビンに反応してやがる。
何とかして止めなければ!
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