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50話
「色々聞いてすまなかった。三人がへんな男に引っ掛かってないかと心配でな」
へんなのはその耳と尻尾だよ。
「まあ、なんだ。どちらかと言うと引っ掛かったというより捕まえたようだしな」
そんな可哀想なものを見る目でこっち見るなよ。
「改めて、俺は猪井 厳丈。三人の友人を助けてくれたこと感謝する」
チョコ太の面影が一ミリもないな。
「三人から紹介されましたが左 佐七といいます」
「チョコ太さん、そんな名前だったんだね」
「巴、申し訳ないが猪井か厳丈のどちらかで呼んでもらえないか?」
「なんで? チョコ太さんはチョコ太さんでしょ? ボクこっちの方が慣れてるし、それに可愛いからそれでいいじゃない」
このごっついおっさんに可愛いという意味がわかんねー。
「そうかー、可愛いか。それならしょうがねぇな」
おっさん嬉しそうだな、おい。
「そうだよ、チョコ太さん。その耳と尻尾も相変わらず可愛いよ」
可愛い、コレが可愛いのか。
なにか巴のヤバさが、かいまみえた気がするんだが。
「それでチョコ太さんもこの講義受けるの?」
「この世界を見てみるためにも、基礎知識や基本ルールを知っておくのは必要だろ」
「そうだね」
「そこんとこがわからずに滅んだ街も見てきたしな」
「チョコ太さんは地球の街を見てきたの?」
「酷い状況のところが多かったな。まあ、言葉もルールもわからない世界に放り込まれて、うまくやれって言う方が無理だけどな」
「女神様に呼ばれた人たち以外は、ほぼそんな感じなのかな」
「いや、そんなことはないぞ。ゲームやってた連中はその能力を引き継いでるらしいからな。ある程度まとまって自分の街を守ったり、冒険者やってたり元気にやってるやつも多かったぞ」
「そうなんだ。無事な人たちもいるんだね」
「まあ俺も地球の街、全てを確認した訳ではないがな」
くそ、結構重い話のはずなのに、耳と尻尾が気になって集中できねぇ。
あれ三毛猫だろ?
なんでもっとゴツイ感じの耳とか尻尾じゃないんだよ。
ゴツイおやじに三毛猫の耳と尻尾とか。
こんなギャップいらねーよ。
「左の字よかったね」
全然よくねーよ。
なんかいやな感じに悶々としてるよ。
「無事な街もあるってさ」
俺の心がなんか無事じゃないよ。
「どうしたの左の字、なんか考え事?」
「いや、耳と尻尾がさ」
しまった!?
「ああ、うん、いいよね! チョコ太さんの耳と尻尾」
あれ?
「おお、この良さがわかるやつがここにもいたか!」
え?え?
「佐七さん、頑張って下さい」
いや、そんな応援要らないよ。
なにそのやっちまったみたいな顔。
「そうなんだよ、やっぱりわかる人にはわかるんだよ」
いや、ごめんなさいわかりません。
「そうだよな! 俺も自画自賛だがこの耳と尻尾はかなりのもんだと思うんだよ」
かなりヤバイものってことですかね。
「そういえばここに来る前に、ポタ族っていう人たちと一緒だったんだけど。もうねもこもこのふわふわでサイコーなの」
「ああ、たしかにパポールたちは可愛いかったな」
あ。
「そうなんだよ! パポールたちポタ族はねもこもこのふわふわでしかも声もすっごく可愛くてね」
あの、巴さん。
腕離してもらえませんかね。
「ほう、そんなにか」
「うんうん、チョコ太さんも絶対に仲良くなりたくなるよ」
「なるほど、巴がそこまでいうのなら相当だな」
「そうだ! ボク達用事が済んだらまたパポール達と合流する予定なんだ」
え? そんな予定だったの?
「チョコ太さんもよかったら一緒にこない?」
ちょ、え。
「おお、いいのか」
よくないですよ。
三毛猫耳、三毛猫尻尾、身長190センチ、筋骨隆々、おっさん。
どこにも需要ないよ。
「うんうん、一緒に行こう」
だめだ巴が止まらない。
ルル、キョウ、止めてくれ。
いや、首を横に振るんじゃなくて。
おい、目をそらすなよ。
あの、徐々に距離取るのやめてくれませんかね。
もうなんでもいいですからここから助けて下さい。
……
猫耳おっさんが仲間に加わった!
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