57話 レイラの想い その2

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57話 レイラの想い その2

「お母様」  エーラってば深刻な顔をしてどうしたのかしら? 「何かしら」 「本気であの男の元に行くおつもりですか?」  あの男とは随分な言い方ね。  あれだけ派手にやられたもの、しかたないのかしら。 「なにか問題でも?」 「お母様はこのデルバレバの長なのですよ」 「それは貴女達姉妹に引き継ぐと言ったでしょう」 「無責任だとは思わないのですか?」  無責任ねぇ。  この街を護っていること自体、私や先代、先々代の善意なのだけれどね。 「今までの貢献を考えれば、無責任と言われることはないと思うのだけれど」  この街を護り続けた期間を考えれば、かなりの貢献よね。 「それでもです。お母様がいるからこそのデルバレバだと多くの民が思っています」  あらあら、昔の私と同じ事を言うのね。 「それ、先代から長を引き継ぐ時に私が言った台詞だわ」 「からかわないで下さい!」  からかうつもりもないのだけど。  この娘の余裕の無さは少し危なっかしいわね。 「エーラ」 「エーラお姉ちゃん」  あらあら、ノックもしないで。  ライラにノーラ血相を変えてどうしたのかしら? 「姉さん、ノーラどうしたの?」 「カシュタンテ王国から使者がきてるの」 「カシュタンテ元女王と闇剛刃(あんごうじん)カシュタンテを寄越せとさ」  あれだけの被害を受けたのに、まだ懲りないのかしら。  聞いた限りだとかなり強気のようだし、あれ以上の戦力を用意してるということ?  相手はカシュタンテ王国のみではなさそうね。  カシュタンテをほしがるのは王国の象徴としてだとして、狂戦士をほしがる、そしてこの場所に兵力を集めるということはロジュペル帝国あたりかしら。  あそこの皇帝は狂戦士と私にご執心だったものね。  でも2国だけで私と狂戦士のいるこの場所に、攻めようとはならないわね。  ということは周辺各国の連合軍かしら。  となるとかなりの大部隊。  確かに使者も強気になるわね。  ただ、普通の相手ならばそれでよかったのかもしれないけれど。  相手はヒダリ様ですからねぇ。  周辺各国の皆々様、ご愁傷さま。 「渡せと言われても私達が匿っているわけでもないし、どうすれば」  まあ、知りませんといっても彼らは攻めてくるでしょうね。  娘達はそこに気づいているのかしら? 「とにかくカシュタンテ女王も剣もここにはないことを伝えましょう」 「わかった」 「わかったよ」  やはり気づいていないようね。  まあ、この辺は経験を重ねるしかないでしょうね。  エーラもエーラでヒダリ様にはあんなに強気に出たのに、狂戦士のいないカシュタンテ王国のそれもただの使者なんかに動揺するなんてまだまだでねぇ。 「エーラ、それにライラ、ノーラ。三人とも聞きなさい」  あらあら、三人とも小さいときと同じ顔をして。  大きくなったかと思っても、なかなか変わらないものなのね。 「この件は私に一任しなさい。ただし交渉の場には貴女たちも同席しなさい」 「わかったわ、お母様。でもどうするつもりなの?」 「ヒダリ様に丸投げするのよ」  この娘達にもヒダリ様達の力を見せておかなくてはね。  絶対に逆らってはいけない相手というものを知る良い機会だわ。 「あの男に?」  エーラは一々引っかかるわね。  本当にヒダリ様が嫌いのようね。 「その人って確か」 「母様を娶ろうという変わり者の男だな」  変わり者って、ライラったらそこまで言わなくもいいでしょう。  しかも私を娶ることがおかしいみたいな言い方しなくても。 「女王もカシュタンテもヒダリ様のもとにいますからね」 「なっ!? 母様だけでなく狂戦士まで!」 「そのヒダリ様という方は正気なのですか?」  たしかに凶壁と狂戦士が同じ男性の元に嫁ぐなど、誰が予想したでしょう。  娘達はしらないけれど狂竜アスクリスもいますからね。  そうですね、端から見たら正気の沙汰ではないのかもしれませんね。 「とにかくこの件はヒダリ様にお任せします。貴女達もそこに同席しなさい」  凶壁、狂戦士、狂竜がそろって暴れるいい機会ね。  何に喧嘩を売ったのか、その身をもって教えてあげましょう!
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