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60話 レイラの想い その3
久しぶりの戦場。
やはり昂ります。
狂戦士の強さは相変わらずですが、クリスさんの強さは凄まじいですね。
流石は狂竜アスクリスといったところでしょうか。
あら? 戦艦と空母が後退していきますね。
地上の部隊も後退するようですね。
一度下がって部隊の再編というところでしょうか?
ならばこちらも一度下がりましょうか。
無理をするとヒダリ様が心配されますしね。
まさか戦場に出ることを、あんなに心配されるとは思いませんでした。
凶壁、狂戦士、闇剛刃、狂竜。
多くの民が脅威と感じ、決して自分達と同じ存在と思わないような強者達。
それでもヒダリ様にとっては普通に守るべき妻達なのでしょう。
「お疲れさん、四人とも怪我もなさそうでよかった」
ああ、幸せですね。
人に心配されることが、こんなに嬉しいとは思いませんでした。
敵の本気は、かなりのもののようですね。
空を埋め尽くさんばかりの軍勢が、デルバレバを判包囲し始めました。
流石にこの数は尋常ではありません。
皇帝は本気で全てを手に入れるつもりのようです。
「んじゃ、こっからは俺が行くよ。流石に愛妻達だけ前線にってのは、あんまカッコよくねぇからな」
あなた、あなたはこの数を見ても何も気にしないのですね。
そしてそれは虚勢でも強がりでもないのでしょう。
それでも。
「あなた、御武運を」
「ちょっくらいってくる」
「領主の妻を寄越せはさすがにやり過ぎだろ。売られた喧嘩、買わせてもらいますよ」
ヒダリ様の周囲に透明の球体が浮かび、弾けます。
!?
空を埋め尽くしていた部隊の一部が消えました。
次の瞬間、今度はヒダリ様が消えました。
そして、上空に浮かぶ艦と魔動機兵が次々と消され落とされていきます。
あの大艦隊と大部隊がまるで相手になりません。
強い強いと思っていましたがここまでの強さですか。
一度戦ったことのある、狂戦士もクリスさんも唖然としています。
どうやら終わったようですね。
あの数をこの短時間で文字通り殲滅ですか……
後ろで見ている娘達も呆然としてます。
そうですね、この強さはもう別次元の強さです。
娘達、今見た光景を忘れてはいけませんよ。
ヒダリ様の強さは人の思惑など届きもしない、想像の枠を遥かに越えた強さ。
間違っても戦い挑んではいけませんよ。
まあ、ヒダリ様に挑む前に私達がいますけどね。
「ただいま〜」
「左の字〜」
トモエさんが飛びついていきました。
あれはトモエさんの特権なのでしょうか?
あれは少し、いえ、かなりうらやましいですね。
「ヒダリ殿〜」
あら、狂戦士まで。
それはちょっとずるくないかしら。
「主様〜」
え? カシュタンテまで。
あら、二人ともその顔はなにかしら。
なんで私に向かって勝ち誇った顔をしているのかしら。
いいでしょう、その喧嘩買いましょう。
「あなた〜」
狂戦士とカシュタンテを弾き飛ばし、ヒダリ様に抱きつきます。
二人とも驚いた顔をしていますね。
ふふふ、私だってやる時はやりますよ。
「あのお母様、その、スキンシップもよいのですが。とりあえず色々片がついてからの方が」
娘にたしなめられては仕方がありません。
名残惜しいですが、一旦離れましょう。
ええ、狂戦士、一時休戦です。
「改めまして、ガンドラル村領主サシチヒダリさま。我がデルバレバへの救援、心より感謝いたします。デルバレバを代表して、私エーラ・デルバレバがお礼を申し上げます」
娘達三人がは片膝をつき頭をさげます。
まるで臣下の礼のようですが、この件はそれでいいのです。
ヒダリ様を、敵にまわすのは愚策中の愚策。
臣下でもなんでもいいから、少しでもデルバレバにあの力が向かないようにするのです。
「おおう、態度が一変したな」
娘達が畏怖の眼差しをヒダリ様に向けています。
あの戦いを見てしまえば、仕方がありませんね。
あれはまさに古の神々の戦いそのもの。
優しくも激しく強い、愛しいあなた。
多分、破壊の神がいるとしたら、それはあなたなのかもしれませんね。
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