SECRET 01

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 自然な動きで私の肩を抱き寄せた存在を見上げると、左側の前髪からサイドまできっちりと後ろに流し固めた黒髪の、とても端正で、綺麗な顔立ちをした男の人が立っていて、  「…どうした?」  心配そうに私を覗き込んでくる彼の出で立ちは、夕暮れよりも鮮やかで、やってくる夜にきっと映えるだろう赤のジャケット。  コントラストになっているのは、中の黒シャツと、セットせずに垂らしている右側の黒髪の艶。  目にかかるくらいの前髪の先に導かれて、その睫毛の長さを見せつけられた。  「ケイ、さん?」  私が口にすると、彼、ケイさんは僅かに目を見開いた後、薄い唇の端を上げる。  「悪いな。今日はケイじゃなくて、サクがいい」  「え?」  「サクだ」  上がり眉の直ぐ下から、とても色香のある眼差しが真っすぐに私を見つめてくる。  「えっと…」  「呼べよ、サヤ」  戸惑って押し黙った私の唇を、彼の曲げた人差し指が下から押して促してきた。  「呼べって」  「…サク、さん」  そう呼んだ私の肩を、ケイ――――――もとい、サクさんは更に強く抱き寄せた。  「良い子だ。行こうか。予約してあるんだろ? ホテル」  少し屈んで顔を近づけてくるサクさんの声音が、言葉を刻むたびに私の耳殻に形無く触れてくる。  鳥肌が立つようなその刺激に、頭の中が、求めていた欲を鮮明に思い出していた。  「――――――はい」  応えた私に、サクさんは満足そうに目を細める。  もう、引き返せない。  私は、熱くなった息を飲み込んで、サクさんのジャケットの裾を小さく、指先で掴んだ。     
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