SECRET 02

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 三年も皆藤さんの下で働いているから分かる事。  この指示は、フロー作成に始まり、百人余のコールテーカーにどうやってそれを展開するか、研修スケジュールまで全てこみこみ。  「わかりました」  「よろしく。資料は権限つけて昨日リンク送っといたから」  「確認します」  「また紛らわしい名前と仕組みでさ~、社内の人間がフィードバック必要なくらい複雑なプランを、ユーザー様がそう簡単に理解出来るかってんだよ、現場の苦労を考えろっての、ったく」  「そんなに大変だったんですか?」  普段から機嫌を曲げる事の少ない皆藤さんが、朝から眉間に皺を寄せる事自体が珍しい。  「理解するのに4時間かかったぞ、俺は。このクソ忙しい月末に4時間! で、説明する側も理解が不十分だったのか、いや、あれは新顔だな。実施研修。同じ個所の説明聞いてる筈なのに、確認する度に前提が覆ってさ~、営業の奴ら、開発部に相当クレーム入れてるよ、あれは」  「うわぁ…」  うちの会社は、一般の人が知らないような通信技術の開発、その整備、そしてそれを活用する機器の販売まで手広く行っている。  知名度があるのはきっとその機器と使用する回線サービスの事で、私が所属するこの部署は、インハウスの顧客サポートチーム。   個人取り扱いと企業取り扱いの二班に分かれている。  マネージャーであるこの皆藤さんをトップに、現在は百十四人のコールテーカー、それを二十人前後に分けて管理する五人のチームリーダー、更にそれを統括する現場トップのスーパーバイザーが三人、というのが一応の図式。  その中で私は、非常時のコールテーカー兼、スーパーバイザーの補佐兼、部署トップダウンの研修担当兼々々。  それに加えて皆藤さんの秘書のような仕事もこなしていて、忙殺されるなんて事はないけれど業務時間の密度はかなり濃い。  人事的に、"秘書"なんて役割はほんとは無いんですけど。  「わかりました。気合入れて見てみます」  「頼む」
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